第45話 冒険者ギルド

それから五日が経ち、通常授業にも慣れてくる。


前世の記憶がある今、特に難しいことはない。


中学生くらいまでを収めていれば、問題なく卒業出来るだろう。


兄上やレイラも俺達に絡んでくることもなく、教会にも今のところ動きはない。


諦めたとは思わないので、何かしらの策を練っているのだろう。


そうであるなら、こちらも対処を進めるとしよう。


「さて、今日は部活が休みだな」


「はい、毎週休み前は部活がない感じですね」


「では、予定通りに行くとしよう」


俺はユリアを伴い、教室から出て行く。

ちなみに、未だに生徒達には空気のように扱われている。

ただ、俺に関して言えば部活でも同じか。

ユリアの方は徐々に明るさを取り戻し、テニス部や茶道部でも上手くやっているようだ。

べ、別に寂しくなんかないんだからね! ……男のツンデレ、誰得だろうか。


「確認ですが、冒険者ギルドに向かうのですね?」


「ああ、そうだ。お金稼ぎもそうだが、将来のことを考えてな。何より、俺達には戦闘経験が圧倒的に足りてない」


「そうですね、それは重々承知です。ご主人様を守るためにも、私も頑張ります」


「ふんっ、期待せずにいよう(俺が守るんです!)」


ユリアを冒険者登録させるかは、俺とアルヴィスの中で一悶着あった。

危険が伴うし、推しに働かせるというのが引っかかった。

ただ最終的には本人の意思を尊重することにしたのだ。

途中の待合馬車に乗り、冒険者ギルド前で降りる。

そして扉を開けると……そこにはイメージ通りの光景が広がっていた。


「ガハハ! 今日も生き残ったぜ!」

「酒だ酒だ! もっと寄越せ!」

「かぁぁ! うめぇ!」


聞いた通り、冒険者ギルド内には酒場があるようだ。

入り口から左側にカウンター席やテーブル席があり、そこが飲み食いしていい場所なのだろう。

反対の右側には掲示板があり、そこに依頼票が貼っている。

奥には受付があり、あそこで登録をするのだろう。

すると、ユリアが俺の服の端を掴む。


「どうした?」


「あれ? 私……も、申し訳ありません……えっ」


ユリアが手を離そうとするので、その手を押さえつける。

瞬時に何が起こったか判断がついたからだ。

恐らく、奴隷オークションに近い空気感を感じたのかもしれない。

そもそも、生粋のお嬢様であるユリアが会わない人種達だろう。


「そのまま、俺の手に捕まってろ」


「は、はぃ……」


……おてて柔らかいよォォォ!

なんとか平静を装う俺の前に、厳つい男が立ちはだかる。

身長は190近く、体重は軽く100はありそうだ。

ヒゲモジャで如何にもな山賊顔といったところか。


「へへっ、随分と良い女連れてるじゃねえか」


「ふっ、そうだろう(当たり前じゃん!)」


「ご、ご主人様!?」


ここで争うのは得策ではないので、受け流すことにした。

ただ、何故かユリアがオロオロしていた。

ひとまず、そのまま横を通り過ぎようとする。


「ま、待てやコラァ! なに無視してんだ!」


「無視などしてないが? そもそも、今の俺は機嫌がいい……今のうちに失せろ」


「なっ……! 貴族の制服着てるからって調子にのるなよ? ここは子供が来る遊び場じゃないんだぜ?」


「ほう? 俺が調子に乗ってる?」


合ってます!

何故ならお手手繋がれたまま、腕を組まれてるからです!

めちゃくちゃ幸せです!


「な、なにをニヤニヤしてやがる」


「いや、してないが……それで、何の用だ?」


「へっ、簡単な話だ。その女を置いてい——グヘェ!?」


気がついた時、俺は氷を纏った拳を腹に叩き込んでいた。

男は悶絶して膝をつく。


「ユリアを貴様などにやるわけがなかろうが」


「っ〜!?」


渡すとしたら俺を倒せる者、尚且つ良い男なのが最低条件だ。


推しの幸せを願うのが推し道である。


それまでは、俺が守り抜いてみせようぞ。

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