山田大和が捕まった日

命野糸水

第1話

目覚まし時計の音で目を覚ました私はとりあえず鳴り響く音を止めた。朝は寒い。寒いからずっと掛け布団をかけていたいのだがそうはいかない。掛け布団をどかした私はカーテンを開ける。日光が窓越しに部屋に入ってきて朝だということを改めて教えてくれる。いつもと変わらない寝起きだ。


トイレに行った後に洗面所に向かう。手を洗いスキンケアを行った私はリビングに向かった。


「おはよう、千里」


台所で朝食を作りながら母親が私におはようの挨拶をする。おはようと返したは私はダイニングテーブル前まで行きいつもの席に座る。


「ちょっと待ってね。今トーストが焼き上がるから」


母親の声が聞こえる。私はトーストが到着するまでついていたテレビをボーッと見ることにした。そこには朝のニュースが流れていた。


「次のニュースです。今朝4時頃福岡県にある福岡刑務所に収容されていた山田大和被告が刑務所内で死亡しました。70歳でした」


どうやら今流れているニュースの内容は何かの事件の犯人が刑務所内で亡くなったことらしい。山田大和被告と聞いても今のところピンとこない。何をした人物なのかもわからない。


「山田被告は今から18年前の2007年、佐藤洋さん当時27歳とその夫佐藤洋一さん当時29歳が住んでいた家を放火し殺害した容疑で逮捕されていました。山田被告は当時佐藤洋さんに恋愛感情を抱いていましたが、佐藤洋さんに振られたことによる腹いせで放火をしたと供述していました。その後山田被告は裁判所てま無期懲役の判決を言い渡され福岡刑務所に収容されていました」


18年前の2007年といえば私が生まれた年である。そりゃ山田被告と聞いても事件内容を聞いてもピンとこないわけである。


「へぇー、この人亡くなったんだ」


焼き上がったトーストを運びながら母親はそのニュースに関心を持った。


「お母さんこの人知ってるの?」


私は母親に聞いた。母親は当然ながらこの事件が起きた時生きている。当時ニュースでこの事件を見て何かしらの印象が残り今も記憶しているのかもしれない。


「まぁ、そうね。知っているといえば知っているという感じね」


なんとも歯切れの悪い回答である。知っているといえば知っているけど知らないといえば知らないという感じだろうか。


「この人が逮捕された日とあなたが生まれた日がちょうど同じ日なのよ。だからなんとなくね、印象深いというかね。事件を犯した人に対して印象深いなんて思わない方がいいんだけどね」


母親がそう教えてくれた。そう聞くと確かに私と縁があるとまではいえないが偶然が重なった出来事だ。


「早く食べちゃいなさい。遅刻するわよ」


母親はそういうとトーストをダイニングテーブルの上に置いた。もうこの話題には触れる必要はないと判断したらしい。


「いただきます」


私は運ばれてきたトーストを食べた。食べながら時間の内容を少し整理した。山田大和被告は今朝70歳で亡くなったらしい。事件を犯した2007年は今から18年前だから山田大和被告は当時53歳。53歳のおじさんが27歳の佐藤洋さんに想いを寄せて振られて事件を起こした。


2人がどこで出会ったのかは分からないが振っただけで殺されてしまうこともあるのだ。恋愛は少し怖いところもあるなと私は思った。

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山田大和が捕まった日 命野糸水 @meiyashisui

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