現在は学問の神様として有名な菅原道真が主人公の歴史小説。これは一人の人間が怨霊と恐れられ、ついには神様として祀られるようになった道真の一代記である。
菅原道真は幼いころから頭角を現し、若くして官吏となった優秀な人材だった。しかし時は藤原氏の時代。道真をよく思わない者も多くあった。特にある人物からは鬼を差し向けられ道真の邸内に侵入したり、子供を呪詛されたりした。道真が出世するほど妬みを買い、ついには左遷に追い込まれる。この時詠まれたのが有名な「東風吹かば」から始まる有名な詩だ。
そんな道真に仕えている者の中に、芹という一人の少女がいた。芹はあるところから道真を観察するために送り込まれていた。芹は何故か道真が怨霊化することを知っていて、その謎を追っていたのだ。しかし、芹は道真を観察すればするほど、怨霊とは縁遠い人物に見えてくるのだった。
菅原道真といえば教科書にも載る重要な人物で、各地に伝説も多い。それ故に読者を楽しませるには歴史に嘘がつけない。この物語はそんな史実を踏まえた上で、人々の人柄や鬼や謎の少女といった「史実+α」がちゃんと述べられている。歴史好きな方も、ファンタジーが好きな方も満足できる一作です。
是非、ご一読下さい。
怨霊化した道真によって世界が破滅させられそうになっている現代。
そこから道真のいる平安時代へと送り込まれたのは、女子高生の芹(せり)です。特別な力を持たない彼女に課せられた使命は、道真がいかにして怨霊化したのかを探ること。
菅原家の家人となった芹は、少年・阿呼(あこ)(のちの道真)に気に入られ、傍で彼の成長を見守っていきます。その年数、まさに三十年以上! 勉学に励み、出世していく道真もまた、芹のことを家族のように思ってくれます。
このお話の面白いところは、芹のいた未来では怨霊化した道真が、この平安時代ではむしろ善き人物であることです。家族を愛し、詩を詠むことを愛し、勉学を怠らず、民草の苦しみにも目を向けられる、心優しき真っ直ぐな人物なのです。
そんな彼には、さまざまな災難が降りかかります。それは主に出世欲や嫉妬から生み出される悪意であり、道真や彼の周囲の人々を苦しめていきます。さらには、裏で糸を引く者の存在も見え隠れし始めるのです。
道真は根気強く前を向いて歩もうとします。彼にも芹を始めとする味方がいますが、少数にすぎません。
このような道真が、いかにして世界を破滅させんとする怨霊と化したのか?
彼が耐えられないような何かが起こってしまうのか?
確定した未来を拒否したい気分を味わえます。
芹と共に、この道真を傍で見守ってみてください。
お薦めです(^^)!
『月夜、梅花を詠む〜物の怪が跋扈する平安時代、菅原道真が怨霊化するまでを追う〜』は、「菅原道真=怖い怨霊」という歴史の“結果”だけを知っている私たちに、その裏側にある感情と時代の空気をもう一度考えさせてくる伝奇ファンタジーです📜✨
平安京という、政治と儀礼と噂話が渦巻く都を舞台に、物の怪たちが跋扈し、人々は怨霊を怖れつつもどこか諦めたように日常を続けている👻🌓
その中へ、現代の少女・首藤芹という“異物”が放り込まれることで、読者は歴史の只中を外側と内側、二重の視点から眺めることになります📚👘
また「怨霊になる」と決まっている人物を追う物語なのに、それでもなお“運命に抗う物語”として機能しています🔥🕯️
史実・怪異・青春ドラマが三層構造で絡み合いながら、“怨霊”という言葉の意味自体を揺さぶってくる、静かで骨太な伝奇譚🌕🌸