第18話
「言われた事はすごく納得できたけど
その話からすると
今回に関してだけは、イチカちゃんも関係あるかも。」
そう言って笑いつつ、考えながら言う優くんに
なんで?と口にしたが
それには答えて貰えなかった。
「そろそろ行くね。」
そう言って優くんは、柔らかい表情で
こちらを見た。
「分かった。
帰り気をつけてね!」
先程感じた寂しさとは違い、穏やかな気持ちで
そう言えた。
「うん、またね」
そう言いながら、右手を私の頭に手をのせた。
その重みで少し視線が下がる。
その手でゆっくり頭を撫でる。
髪を耳にかけ、そのまま滑り、毛先を掬い上げた。
指先を追って視線を優くんに向けると
白い前髪の隙間からの視線が交わり
色素の薄い琥珀色の瞳に囚われる。
表情はすごく柔らかいのに
その眼差しが強い。
でも、あの時の畏怖を感じたのとは違う。
触れられてたのは僅か数秒。
いつの間にかヘルメットを被っていて
バイクに乗ったその背中は
小さくなって、もう見えなくなった。
触れられた頭が、頬が、耳が、熱い。
その余韻にしばらく動けなかった。
何分か何も考えられず、ボーッとしていたら
手元のスマホが震えて現実に引き戻された。
確認すると茉莉花からメッセージだったようで
ペンケースをうちに忘れているらしいので
明日持ってきて欲しいとの事。
急に現実に戻ってきたと感じながら
家に入った。
『了解』とだけ返事を返し
スマホをベッドへ投げ、着替えを持って
お風呂へ向かう。
私は優くんが気になっているのかな。
それとも、男の子に慣れてないから
こうなるのかな。
今はまだ、この問いに答えが出ないことは分かっているけど
「…会いたいな…」
呟いた言葉は湯気に霞んでいった。
お風呂を出て、洗濯機を回そうと
衣類を洗濯機へ入れてる中
今日借りたパーカーを手に取る。
口元に寄せて
スンッと匂いを嗅ぐと
借りた時より、更に香りは薄くなってたけど
まだほんの微かに優くんの柔軟剤の香りがした。
あんまり香りが強いの
好きじゃ無いのかな?
そんな事を思いながら
洗濯機の中へ入れて、スイッチを押した後
自分の行為の変態っぽさに
独りでに自爆する。
今ばかりは1人でよかった。
部屋に戻り、ベッドへ投げたスマホを手に取ると
メッセージの受信を知らせる通知があった。
開けば
『今日はありがとう。
おやすみ。』
優くんからのメッセージ。
ヤバい、なんかニヤける。
『こちらこそありがとう!
おやすみなさい』
返信して、眠りについた。
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