スキル『万能物質』で成り上がる

ゴラリ

第1話 登校

 

 (次は、あの交差点を左折か…)

 

 配達先を確認しながら、トラックを運転する。

 時刻は午前八時、学生が多い時間帯だ。

 

  (…もう新学期の時期か)

 

 重いまぶたをこすり、ハンドルを握り直した、そのとき――


 視界が、歪んだ。


(……っ、まず――)


 そこで、意識が途切れた。








「はぁ…」

 新高校生になって1週間、受験が終わったと思ったら、すぐに憂鬱な毎日の再開だ

 

 もう一日8時間の普通授業が始まっている。

 俺は重い足を引きずるように登校していた

 

 目の前に大通りの交差点が見える

 ここを渡れば、もうすぐ高校だ

 

 ため息をのみ込みながら信号を待つ


 ふと左を見ると、異常なスピードで走ってくるトラックが見えた。もう少しで交差点を通るだろう。

 信号は青になったが、通り過ぎるのを待つことにした。

 

 しかし、一匹の白猫が俺の横を通り過ぎ、横断歩道を渡っていく。ちょうど轢かれそうだ。

 トラックが通るのは自分から見て奥の車線だ

俺は、手前の車線で猫を捕まえた

 目の前をトラックが過ぎていく。


 (あのトラックの運転手、目バキバキでクソ焦ってたな)

 

 そう思って前を向いた



  

 そして、後ろから来た暴走トラックにひかれて死んだ






 

 

 背中の痛みで目が覚める。青空が見えた。

 

 「…外?」


 体を起こす

 土の道が自分の下からはるか先まで伸びている

 周りには草原が広がっていた


 「……は?」


 





 俺は道を歩きながら、現状について考える。

 大通りで車にひかれて、目が覚めたら通りの上だった。でもアスファルトじゃなく土

 周りは住宅街じゃなく草原


 わけがわからない。

 だがそれだけじゃなかった。

 腕や足が細くなり、髪も白くなっていた。

 それでいて弱っているわけではない。

 逆に身体が軽く、目も良くなった気がする


 (……異世界転生?)


 荒唐無稽な考えが浮かぶが、否定しきれない。


「とりあえず、帰らないと」


 道には人の足跡がある、さらに進んでいく

 





 しばらく歩いていると、前方に小さな影が見えた。

 小走りで近づく。

 

 人のようだ、それも馬に乗っている


「お~い!」


 興奮気味に声を上げながら走っていく、そのとき


 ガサガサ

 

 背後から音がした

 

 振り向くと、そこには緑色の人型の化け物がいた

 ゴブリンだ


「ギギャー!!」


 これは俺の絶叫だ

 全力で逃げた

 

 すると前方の影が高速で近づいてくる。馬に乗っている人は、騎士のような格好をしていた


 さっそうと俺の横を駆け抜け、ゴブリンの首を跳ね飛ばした


「大丈夫か!?」

「はぁ…はぁ………だ、大丈夫です。……ありがとうございます」


 震える声で礼を言う


「こんなところで何をしている。親はどこだ?はぐれたか?」

 

「はぐれたというか……ここどこですか?とりあえず帰りたくて」

 

「ここ?ここはラティムとパディムを結ぶ道だ……っと、まずはコイツの処理だな、ちょっと待っとけよ」


 そういって騎士はゴブリンの死体を草原に運んでいく


 聞いたことのない地名

 目の前には騎士と魔物の死体


 (本当に、異世界転移を……)


「おい、火魔法使うからな、危ないから離れてろよ」

「え?」


 そういって騎士が何かを唱えた途端、ゴブリンから火が上がる


 驚きで目を見開く

 

「……は……はは」

 (トラックにひかれて、剣と魔法の異世界に転生って、……テンプレすぎないか?)

 

 

 問題なく済んだようで、騎士は俺に向き直った


「名前は何だ?」

「木暮陸斗です」

「コグレはどこから来たんだ?」

「日本という国です」

「ニホン?聞いたことないが、親はどうした?」

「親?…親は…え~と……………………?」


 (あれ………俺の親って、誰だっけ?………年は15歳で、…………なんだ?、記憶がいくつも欠落してる?…)


 混乱する俺をよそにいくつか質問された。俺はその大半に答えられなかった


「……まあなんだ、こんな場所で立って話すのもつらいだろう、一度町へいこう。ほら、つかまりな嬢ちゃん」

 そういって手を差し伸べてきた

「俺、男です」

「おお、そうだったか。すまんな坊主、ほら、馬に乗れ」


 ……ずっと違和感あったけど、俺の姿どうなってんの?





 町についた。中世のような町並みで、壁に囲まれていた。

 向かう途中にも少し話をした。どうやら元騎士で、カリムというらしい。

 そしてこの町はラティムだそうだ。

 

 人に会えたことで少し冷静になれた気がする。 

 どうやら記憶が欠落しているようだ。

 たが、強く、「帰りたい」という思いがある。

 これが何なのかは分からない。

 

 さらには、さっきから、日本語じゃない言語が理解できているし、話せている。……まだ現実感がないが、

 とりあえず、帰ることは出来るのだろうか。それが知りたい



 街を移動し、教会のような場所に連れてこられた。どうやら、この教会の騎士だったらしい。

 入ってすぐのところに、修道士らしき人がいた。

 

「おかえりなさい、カリムさん。…その子は?」

「ただいま、この子は巡回中に拾った。どうやら記憶があいまいらしい、エルモス神父はいるか?」

「はい、いますよ」


 しばらくして100歳近くに見える男性の神父がやってきた


「お疲れ様ですカリムさん、で、用件とは?」

「巡回中に東の街道で一人で歩くこの子を見つけたんだが、記憶があいまいなようでね、家族が見つかるまでは、ここで面倒を見れないかと思いまして」

「なるほど…………お嬢さん、何か覚えてることはないのかな?」

「……あの、多分、俺の家族は探しても見つかりません」

「…なぜかな?」

「信じてもらえるかはわかりませんが……」

 

 俺は、別の世界から来たかもしれないこと、そしてその根拠を伝えた。


 


「……異世界から来たと…」

 

 少し懐疑的な視線を向けてくる

 

「……なら、ステータスを見てみよう」

「ステータス?」


 言われるがまま、水晶のようなものに触らされる。

 鑑定というものを行うらしい。


 すると、空中にパネルのようなものが浮かび上がってきた



 名前 木暮 陸斗

 年齢 15

 種族 ??

 lv   1

 称号 異世界人

 祝福 聖神の祝福

 加護 ??の加護


 生命力 10/10

 魔力  1253/1253


 筋力 1

 防御 1

 持久 2

 俊敏 3


 スキル 言語理解


 ユニークスキル『万能物質』lv1

 



 (…………なんか色々おかしくね?魔力多すぎじゃ?

 それに、ユニークスキルなんてものもある)



 エルモス神父は目を見開き、驚きを隠せない様子だ。



「……本当に異世界から来たのじゃな、それにユニークスキルを持っておる。」

「ユニークスキル?」

「ユニークスキルは、数千万人に一人しか持たないとされる非常に協力な力じゃ」

「数千万人に一人!?」

 

  ステータスにスキル、神、わからないことが多いが、異世界転生を体験した後じゃ何でも受け入れられそうだ


 それよりもまず、聞きたい事がある


「あの……それで……できれば、元の世界に帰りたいんです。何か方法はないですか?」

「……記憶がないと言っていたが、帰りたいのかな?」

「……はい、記憶はないですが、帰りたいという強い気持ちがあるんです。どうにか帰れませんか?」


 エルモス神父は少し考えてから口を開いた。


「あるには有る、じゃが、非常に難しいじゃろう」

「どんな方法ですか?」 

「……世界を渡るなど、人間には到底不可能なことじゃろう。じゃが、神にならできる。神に頼めばよいのじゃ」

「神に頼む?そんなことが……?」

 

「願いの試練、というものじゃ、これを攻略すれば、どんな願いも叶えてもらえる」

「願いの試練を攻略すれば……」

 

「うむ、じゃが、問題もある、願いの試練は、その願いの程度によって、難易度が決まるんじゃ。ささいな願いなら簡単な試練が課されるが、不老不死や、死者の蘇生を願えば、無理難題が課される。」

 

「……なるほど、別の世界で死んだはずの自分を、元の世界で生き返らせてもらう、死者の蘇生以上の願いかもしれませんね。」

 

「うむ、向こうの世界での辻褄合わせも求めれば、間違いなく無理難題が課される。この無理難題を攻略した者は、歴史上ほとんどおらんのじゃ。」


「そして2つ目の問題じゃが、今起きている戦争についてじゃ」

「戦争?どこで起きているんですか?」

「世界中じゃ」

「え?」

「この世界を二分して、聖神側と邪神側が戦争を行っておる。願いの試練を攻略しようとすれば、間違いなく邪神側から妨害が来るぞい。」

 


 絶望が襲ってくる……だが、不思議と、帰りたいという思いは強いままだった


「ユニークスキルを持っているとはいえ、厳しいものになるじゃろう」

 

「……それでも、やってみたいです」


 言葉が自然と出ていた


 エルモス神父は、しばらく俺の目を見つめていた

 

「……そうか、なら、連合に連絡しておこう。」




 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 


 




 


 

 

 

 






 

 

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