第6話 守護者と破壊者

砂塵が収まると同時に、瓦礫の上から二つの人影が姿を現した。


一人は、派手なレザーの戦闘服に身を包んだ女。もう一人は、筋肉質な体躯に、刺青のような模様が刻まれた男だ。彼らは三人の隠れる高架下に向けて、まっすぐ歩み寄ってきた。


朔夜は即座に臨戦態勢に入った。花を背後に隠し、俊にアイコンタクトを送る。


「おいおい、二人がかりかよ」朔夜は小石を一つ握り込みながら、口元で笑った。「ずいぶん派手な格好してんだな、あんたたち」


女は優雅に微笑んだ。


「私はアテーナー。その隣がペルセよ。悪いけど、あなたたちの『幻の花園』を探す旅は、ここで終わりよ。大人しく死んでもらうわよ?」


花は震え、思わず俊の服を掴んだ。


「てめぇ、勝手なこと言ってんじゃねぇ!」


朔夜は叫ぶと同時に、異能『引金(トリガー)』を発動させた。手に握っていた小石は、マッハの速度で放たれる弾丸と化し、アテーナーの顔面に向けて一直線に飛んだ。


キン!


しかし、小石が当たる直前、アテーナーの目の前の何もない空間に波紋が走った。小石は空中に現れた見えない壁に叩きつけられ、砕け散る。


「うふふ、無駄よ。私の異能は『防御(プロテクション)』。壁をね、君の好きなところ、好きなサイズで自在に作れるの」アテーナーは楽しそうに手をかざす。


朔夜は舌打ちをし、すぐさま周囲に転がる瓦礫を次々と投げつけた。大小様々な瓦礫が、アテーナーに向け、雨のように降り注ぐが、全て防がれる。


「朔夜、男の方に投げるんだ!」


「わかってる!」


朔夜は俊の指示に従い、狙いをペルセに切り替えた。拳大のコンクリート片が、ペルセの顔面めがけて高速で飛翔する。


ペルセは一切動じなかった。「フン、小賢しい」


ペルセは飛び道具を避けようともせず、それを目掛けて剛腕を振り抜いた。ドォン! 拳が触れた瞬間、コンクリート片は爆発したように分子レベルで粉々に崩壊し、細かい砂埃となった。


「俺の異能は『粉砕(グラインド)』。生きてないもんは、全てこうだ。テメェらも例外じゃねぇ」ペルセはそう言い放ち、砕いた瓦礫の砂埃を払い落とした。


朔夜は顔を引きつらせた。彼にとって、瓦礫を弾丸に変えるという戦闘スタイルは、ペルセの『粉砕』とアテーナーの『防御』の異能の前では、まったく意味をなさない。


「クソッ!」


朔夜は次の一手をどうすべきか、思考を巡らせる。近接戦闘を仕掛けるか、あるいは俊に指示を仰ぐか。その一瞬の逡巡が命取りとなった。


ペルセが地面を蹴る。朔夜が反応する間もなく、ペルセは俊の目の前に瞬間移動したかのように立ち塞がった。彼の驚異的なスピードは、朔夜の思考を置き去りにした。


ペルセの狙いは、朔夜の背後に立っていた俊だった。


「一番冷静そうな奴から潰すのが定石だろ!」


ペルセはその剛腕を俊の顔面めがけて振り抜いた。


「俊!!」


「俊さん!!」


朔夜と花の声が、悲鳴のように響いた。

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