冷戦-第一部「連邦の悲劇」

@dokuren

第1話「国王の勅令」

 この物語は、史実を元にしてはいますが内容は全くのフィクションです。


時は1945年、第二次世界大戦が終了し連合国が辛うじて勝利を掴んだ。史実の歴史とは違い、ドイツ率いる枢軸国は連合国軍の攻撃を史実の国境線で耐え続け連合国は多大な損害を被ったため、事実上の講和を申し出たのである。


1945年6月-イタリア王國-ローマのとあるカフェ跡にて、一人の男が待ち合わせをしている。その男の名前はダルタニアス・オルタ。イタリア王國空軍の元英雄である。

 このカフェには戦前よく来ており、待ち合わせ場所としてよく使っていた。しかし、連合国軍の無差別爆撃により瓦礫の山になっており、ダルタニアスは待っている最中に瓦礫の山を見つめながら、一刻も早い再建を望んだ。


 待ち合わせ場所に、軍用車が到着し、そこからイタリア王國国防軍のマーナ上級将校が降りてきた。


マーナ上級将校「ダルタニアス・オルタ様お待たせしました。」


ダルタニアス「様なんてとんでもない、貴方の方が私より階級上じゃないですか。」

マーナ上級将校「王宮まで向かいます。さぁ、乗ってください。」


マーナ上級将校に案内されて軍用車に乗り込み、ダルタニアスは道中で、今回呼ばれた理由を聞いた。


ダルタニアス「なぜ今回私のような退役軍人を呼んだのですか?」

そう聞くとマーナ上級将校は難しい顔をしながら言った。

マーナ上級将校「と言われましても、今回の件は国王陛下と首相閣下の特殊密命でして、私は内容までは知りません。」


 ダルタニアスは戦争が終わり、自分が国王や首相に呼ばれることはないと考えていたが、呼ばれたということは近いうちに戦争があるのかという不安やまた現役に戻されるのか苦悩を抱えることになると思い憂鬱になった。ダルタニアスは心の中で決意した。


"この任務は自分には適任ではないからという理由で断ろう。もうあんな悲惨な戦争はこりごりだ。"


しかし、上級将校からの一言によりその安易な考えは崩れることになる。


上級将校「そうそう、今回の任務は断らない方が身のためにですよ。断れば死ぬ覚悟をしておけと国王陛下と首相閣下が言ってましたんで」


ダルタニアスは頭の中が真っ白になった。


 そういうやりとりをしているうちに車は王宮及び政府本庁舎と入っていく、ダルタニアスは緊張と不安に押しつぶされそうになった。イタリア王宮及びイタリア王國政府本庁舎に到着して車から降りるように言われ、ダルタニアスは車から降りたが足取りが重い。


面倒なことになることを実感しながら、王宮の階段を登るのだった。


-イタリア王宮-謁見の間


 ダルタニアスは謁見の間に通されるとそこにはかつての上司である。ポットラーレ中将とサヴォイアII世とムッス首相がいた。サヴォイアII世がダルタニアスを見るなら近づいてくる、そして強く手を握って言った。


サヴォイアII世「ダルタニアス、戦争が終わったばかりでもう任務つきたくないだろうが、すまないな。」

ダルタニアス「いえ、お呼びいただき感謝の極み、また何か国家の非常事態ですか?私を呼ぶということは...」

というとサヴォイアII世は申し訳ない顔をしながら言った。


サヴォイアII世「いやそういうわけじゃないんだけど、君の力をまた借りたい、君の力と名声を信じて、イタリア王國の任務を受けてほしい。」

ダルタニアスは諦めながら一言。

ダルタニアス「わかりました。国王陛下の勅命とあらば。」


サヴォイアII世は目を輝かせながら言った。

サヴォイアII世「ありがとうダルタニアス‼︎」

サヴォイアII世はムッス首相とポットラーレ中将に威厳のある声で命令した。

サヴォイアII世「首相とポットラーレ中将!!任務の内容を説明せよ。」


首相は淡々と説明する。

ムッス首相「今回の任務は、1945年の10月に行われるソ連の戦勝記念パレードに出席して、ソ連の書記長である、ベリヤと会談してきてくれ。」

ダルタニアスは疑問を呈した


ダルタニアス「なぜ私が会談をすべきなのでしょうか。本来なら首相閣下や内閣の仕事ではありませんか?」


首相は何故を会談するべきなのかを説明してくれた。


ムッス首相「知っての通り、イタリアは枢軸国の一員として連合国と戦った。しかし、我々は事実上の敗北をしたため、本来であれば、戦勝記念パレードには出席できないのだが、ソ連の書記長であるベリヤは敵味方関係なく英雄的活躍した軍人を呼んで鎮魂をすべきだ。と宣言した。それで、我が国の中で白羽の矢が立ったのが君だったわけだ。」


それを聞いたダルタニアスはため息をつきながら、首相に問いかける。


ダルタニアス「それは名のある外交官に任せるべきであって、私のような退役将校に頼むべきじゃないですよ?首相がだいたいそれをいう時って裏があると思うんですけど。」


首相は笑いながら

ムッス首相「やはり、お前は変わらんな。君が指名された理由は国王がそれを望まれたからである。一番の理由は我が王国はソ連などと友好的な関係を築くことやソ連の正教会やカトリック教会からとある組織の排除をしてソ連国内の教会の影響力を高める狙いがあるのさ。具体的には任務書に書いてある。」


ダルタニアスは困惑して立ち尽くしていると、首相が屈強な衛兵を呼びダルタニアスは両脇を抱えられ車に乗せられてしまったのだった。

車の中で政治将校から今回の任務について書かれた国王勅命書を渡される

国王勅命書には以下のように書いてあった。


ダルタニアス・オルタへ

今回の任務遂行にあたり、君をイタリア国防軍大将に任命し、同時にイタリア国防軍軍事顧問団の統合指揮官に任命する。貴官は以下の任務を達成するように求める


"通常任務:イタリア王国空軍の英雄である貴官は独ソ戦の時に敵でありながらソ連に讃えられたのをきっかけにソ連の戦勝記念パレードに出席をすることを認められた。貴官の通常任務はイタリア王国の味方にソ連を引き入れるため、ソ連指導者ベリヤと会談することである。"


"国王密命:貴官はイタリア王国諜報機関CCIの諜報員である。貴官はイタリア王国の外交方針に基づき、異教徒同盟のメンバーを殺害することを命じられた。貴官の密命はその命令を完遂することである。"


と書いてあり、CCIという機関に思い当たる節がなかったダルタニアス・オルタは国王密命について政治将校に聞いた。

ダルタニアス「CCI?この任務は何ですか?」

政治将校「文書の下を見てください」


ダルタニアス・オルタは下の方を見るそこには驚くべき文が添えられていた。


追伸

この国王密命は正確にはバチカン市国や正教会騎士団の依頼でもある。もし、任務が達成できる自信がなければ、出国前にバチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂に寄って教皇と枢機卿に質問するといい。


イタリア王国国王ヴィットーリオ・サヴォイア


 ダルタニアス・オルタは、この任務に大きな不安を抱き出していた。


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