第25話 ソルジャーカウ
翌日、ステラは、首都アレッジドに向かう街道を使わず、クリムゾンを目指すことにした。
しかし、コンポーズからクリムゾンへ向かう街道はないので、獣達が使うけもの道をのんびり歩くステラ。
時折、クレイジーモンキーが現れ、糞などを投げられたりするが、結界を張っているので無視して歩いて行く。
2週間掛け、やっとクリムゾンに着いたステラは、一息つくために宿を取る。
ここでお風呂に入り気分転換をしたステラは、翌日、フェルメール王国を目指す。
フェルメール王国の名物は、カウ肉だ。
畜産でカウが有名だが、ステラの目的は野生のソルジャーカウを狩って、一人焼き肉を楽しむのだ。
国境を越え、野生のソルジャーカウを狩るため、山間部を目指す。
気配を探りながら、山あいをを進んでいると、複数の人の気配に気づく。
女性2人に、男性1人のパーティが、3匹のソルジャーカウと戦闘をしていた。
「ダン、一匹で良いんだ。逃がすな。足止めしろ。」
「足止めは良いんだけどさ。攻撃が全く効いてねえじゃねえか。〈ホーマ〉。」
どうやら、ドワーフ族と思われる男性が土壁で行く手を阻んだようだ。
そこへ人族の女性が雷魔法を放つ。
「ケラウノス。くそっ、効いてない。」
そこへ龍人族の女性がソルジャーカウに切りかかる。
「おりゃー。ガキーン。」
「攻撃が弾かれてるじゃねえか。どうすんだよ。これ。」
ドワーフの男はあきらめに近い言葉を発する。
実は、ソルジャーカウには魔法耐性があり、魔法攻撃は効きづらく、また、皮膚も分厚いので、剣などの攻撃は達人でもない限り妨げられたりするのだ。
ステラは見かねて声を掛ける。
「あのー。」
「「「えっ!!!」」」
皆が一斉にステラを見る。
「お手伝いしましょうか。」
「何でもいい。仕留められる手段を持ってるなら頼む。」
とダンが返事する。
「アエラス・斬」
「アエラス・斬」
「アエラス・斬」
ステラは、風魔法を3度唱える。
それぞれの風魔法が、ソルジャーカウに向かい、3匹のソルジャーカウの首が斬り落とされる。
「終わりました。」
「「「・・・・・・。」」」
3人とも絶句してる。
「えっと。」
正気を取り戻したダンがステラに近づいてくる。
「お前すげえな。」
他の二人もやってきた。
「助かった。」
「ありがとな。お嬢ちゃん。」
「私はステラって言います。」
「俺はダンだ。」
「フェルトだ。」
「私はアスラ。」
「ソルジャーカウ、一匹貰っていいですか。」
「はっ、全部、お前のもんだよ。」
「皆さん、一生懸命、狩りしてたじゃないですか。
私は1匹貰えたらいいだけなんで。」
「俺達も1匹狩れたら良かっただけなんだ。」
「1匹余っちゃいますね。」
「そしたら2匹持ってけよ。」
「2匹もいらないよ。今、収納、いっぱいだし。」
「お前が狩ったのに、何で、俺達の方が多くもらえるんだよ。」
「分け前、増えるから良いじゃないですか。」
「お前、変な奴だな。」
「よく言われます。」
「分かった。後から文句言うなよ。」
「言いませんよ。」
「感謝する。それに助かったよ。」
ダン達から感謝されるステラであった。
元聖女候補、聖王国に無能と認定されたので出国し自由を謳歌する ~邪魔する者は薙ぎ倒す~ 蒲さし利休さん @rikyuu3221
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