第2話

⚡️ 出撃の準備

悠斗の「よし、行こう」という言葉は、寝室の熱気を一掃した。

密着していたはずの四人は、まるで魔法のように一斉に行動を開始する。プロの戦士の如く、無駄な動きが一つもない。

「待って、先輩!まずはこれ!」

ミリアが詠唱の言葉もなく、光る粉を悠斗に振りかけた。

「『ブースト・マジック・アーマー』!これで防御力と移動速度が少しアップです。急いでるから簡単な術式だけど、ないよりマシだよ!」

ミリアが持つ杖は、普通の魔女が使うものとは違い、先端に精密な歯車と魔力レンズが組み込まれた「魔導銃杖(マジック・ガンロッド)」だ。彼女は素早く部屋の隅のケースから予備の魔力カートリッジを取り出し、装填する。その真剣な横顔は、昼間のドジっ子とはまるで別人だった。

「悠斗、あなたの武器は?」エリスが訊ねる。彼女は既に王室騎士団専用の動きやすい深紅のレザーアーマーを身につけ、銀色の細剣を鞘に収めている。

「俺はこれ一つで十分だ」

悠斗が取り出したのは、転生時にこの世界で手に入れた唯一無二の武器。柄も鞘も一切飾り気のない、真っ黒な日本刀『影斬(かげぎり)』だ。この刀が放つ微かな魔力反応に、エリスは僅かに眉をひそめる。

そしてノアは、素早く窓の縁に飛び乗った。

「ご主人様、王都の第二区画みたいです。敵は五体……いえ、六体!魔力は高いけど、動きは鈍い!たぶん、魔導具で遠隔操作されている魔物です!」

ノアの優れた聴覚と鼻、そして獣人特有の感知能力は、偵察隊よりも正確だ。彼女は愛用の黒い手甲(クロー)を装着しながら、低い声で情報を伝える。

「六体か。ミリアの広範囲魔法が使えるな」悠斗は刀を腰に差し、三人の顔をまっすぐ見た。「目標は殲滅だ。ただし、王都の被害は最小限に抑える。わかっているな?」

「お任せください!」

「承知いたしましたわ!」

「ニャー(了解)!」

恋の熱は完全に消え去り、そこには最強の戦闘集団の顔だけがあった。エリスは細剣の柄を握りしめ、冷たい目で悠斗を見つめた。

「悠斗。夜の相手は後で存分にして差し上げますわ。今は、王都を守るのが先決です。あなたに、勝利の褒美として私を抱く権利を差し上げましょう」

熱に浮かされていた空気は一瞬で消え去り、四人の意識はただ一つ、「危機」へと向かった。

悠斗は一言、鋭く頷いた。

「よし、行こう」

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