職業:魔王 所属:勇者パーティーな私が魔王討伐中!?〜陰キャ魔王様は世界を救いたい〜

宵裂 ツバメ

第一章

第1話

「おはよう、ヨロイさん!」


「お、おはようございます、レムさん。あの、えっと、畑、新しいとこ、耕しました」


この村一番の働き者レムさんは、私が働くといつも褒めてくれる。私なんかがと思うことも多かったけど、最近は素直に受け取るようにしている。正直、結構嬉しいから。


「マジ?!サンキューな!ヨロイさんが来てから仕事が減って助かるぜ」


「あ、その、皆さんには、良くしてもらって、いるので」


そう、素性もわからない私のことを何も言わずにこの村においてくれているのだから、それぐらいのことはやらないと気がすまない。なら素性を明かしてしまえばいいと思うだろうけど、私には絶対にバレてはいけない秘密がある。


それは……私が魔大陸から来ている魔王だということだ!下手に話すとその事がバレてしまいかねないことから、何も言えずにいる。


「あ、そうだヨロイさん、また魔王が従えてる魔物増えたらしいな。どこもかしこも森の中は魔物だらけだし。ヨロイさんも襲われないように気をつけろよ〜。あ、その鎧なら襲われても平気か?ま、気をつけるに越したことはないよなあ。ん?ヨロイさん、どしたん?固まってるけど」


「あ、えっと、その、はい。平気、です。す、すみません……」


「ならいーや」


……ぜんっぜん平気じゃないよ!!


つい、魔王に関する話題が出たから反応しちゃったけど、こんなんじゃいつバレてもおかしくないなあ。まあ、私にはこの大陸に攻め入る気なんて1ミリたりともないからいいのだが、魔王のうちの一人が人間も従えようとして魔物を送っているのだ。


私がここに来ているのもそれを止めるためだったりするのだが、多くの人々には魔王=悪っていう式ができてしまっている。だから私も目的が侵略している魔王を止めるためとはいえ、バレてしまったらその場で殺されかねない。ていうかさ!魔王って人間の大陸で言う領主的な役職なんだからさ!勝手に悪役にしないでほしいよね!優しい魔王だってたくさんいるし!


はあ、世の中生きづらくなったものだよ……。


「……い、おい、聞いてるのか?」


「ぴぎゃうっ!……すみません、その、聞いて、なかったです…」


「お、久しぶりに聞いたな!ヨロイさんお得意の奇声!って、そんなことはどうでもよくて、ヨロイさんてなんでずっと鎧着てるんだ?暑いし重いだろ、それ」


「あの、人と顔、合わせられなくて、だから、隠すためと、地元が、魔物たくさんで……」


「へえ〜、ちゃんと理由あんだな。見られたくないなら俺らの見てないとこでは脱げよ?大変だろずっとつけてんの」


お気遣いはありがたいんだけど、実はこの鎧脱げないんです!なんて言えない。この鎧は私の家系が代々使える能力のひとつなのだが、私は自分の力を使うのがそんなにうまくないし、鍛えてもいないので脱ぎ着できない。


でもでも!なんとこの私、ちゃんとこの理由言い訳を考えておいたんです!(ドヤッ)


ん?詰まっててちゃんと言えてなかったじゃないかって?それは私達コミュ障に対しては禁句!コミュ障は会話が成り立っただけで十分すごいの!…って、誰に対してかもわからない弁明をしながら作業を続けた。


そういえば、お得意の奇声って言われた。別にいいたくていってるわけじゃないのにひどいよ…。でも、そんないじりさえも心地よく感じてしまっている自分もいることに驚き、同時にちゃんと人間たちに馴染めている証のような気がして少し安心した。


◇◆◆◆◆◆◆◇


「っはあ〜、終わったー!ヨロイさんのお陰で日が落ちる前に終わらせられたぜ!ありがとな!」


「お役に立てなら、よかった、です」


「もう大活躍だよ!腹減っただろ!飯作ってくるからちょっとまってな!」


「あ、じゃあ、果物とか、取ってきましょうか?」


「おおっ!いいなそれ!でも無理すんなよ?じゃ、また後でな!」


レムさんが調理場に走っていったのを見届けると、私も森の奥に向かって歩き出した。実は誰にも言っていないけれど、たくさん果物がなっているところがあるのだ。といってもその周りには魔物が闊歩しているから、到底人間にはいけない場所なのだが…。私も敵対はされるけど、この鎧のお陰ですぐ諦めてくれるんだよね。


「今日はどのくらい取っていこうかな〜?」


ぶどうにりんご、梨なんかを取ってカゴに入れていたら、ふと、不思議な匂いがした。魔族や魔物の特徴として嗅覚がいいってのがあるんだけど、一度嗅いだことのある匂いは忘れることはない。でも、この匂いは知らないような気もするし、覚えがあるような気もする。そう、まるで金属が急速に錆びていったときのような……。


「っ!そうだ、この匂い、レムさんが怪我をしたときの血の匂いに似てる……」


このあたりは魔物が多いのに血の匂いなんてさせてたら襲われてしまう。そう思い当たった瞬間私は走り出した。もしこれが村の人だったら、そう考えると居ても立っても居られなくなって、この匂いの発生源へと急いだ。


◇◆◆◆◆◆◆◇


嗅覚を頼りに森を走っていくと、少し開けたところに出た。そして、その中心には腕に大怪我をした女性が一人と、その人の仲間と見られる男女二人が立ち尽くしていた。


彼らの前にはキマイラが居て、今にも怪我をした女性に襲いかかろうとして……。


「あぶない!!」


私は襲われそうになっている女性の前に飛び出した。


キマイラの攻撃を鎧で受け止めると、近くに落ちていた剣を拾ってキマイラの脳天に突き刺した。急所を刺されたキマイラは、逃げようとしたがすぐに倒れた。


私はそこに駆け寄って絶命していることを確認すると襲われていた人たちの方を向いた。


「だ、大丈夫でしたか!?あ、怪我、どうしよう。私じゃ直せないし、ああでもここにいたらまた魔物が……。でも、怪我してたら移動できない?ああ!それより、私が使った剣、皆さんのですよね!ご、ごめんなさい、勝手に使っちゃって」


「………」


見たところ冒険者、なのかな?っていうか怪我してるし襲われた直後にこんなまくしたてられたら困るよね!?三人ともびっくりして呆けちゃってるよ!剣もだいぶ傷ついちゃったし、どうしよう。村の人達なら受け入れてくれるかな?得体のしれない私をおいてくれてるぐらいだし。でも、私だけじゃ連れていけないし、うう、どうしたらいいんだろう……。


「ねえ!あなたどこから来たの!?めっちゃ強いじゃん!剣の扱いも上手だし!っていうかその鎧どこで手に入れたの!?硬すぎない!?キメイラの攻撃なんていくら鎧とはいえ防ぎきれないのが普通だよ!?」


「…はぁ。はいはいストップ、宵。初対面の人にまくしたてない。あと怪我してるんだし急に動いちゃだめでしょ」


今度は私が呆ける番だった。え?なんで怪我してるのにそんな動けるの?体丈夫すぎない?っていうかめっちゃ褒められてた気がするし。でも半分くらい早口過ぎて聞き取れなかった。


なんて考えていたら男の人が、襲われてた人―宵?とか言ってた気がするけど―に魔法を使って怪我を治癒していた。あ、ちゃんとヒーラーを連れていたのか。ならとりあえずは安心だ。でも血がたくさん出ていた今の状態では、一番近い街に戻るのも厳しいだろうし、かといって野宿するのも危険だよね……。どうしよう、村に連れて行ってみようかな……。


「助けてくださりありがとうございます。私、このパーティーで攻撃魔法使いを担当しているラヴィアナ・リシュリーですわ。先程は私達のリーダーがご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません」


「あ、いえ、その、助けられて、良かったです……」


「僕からもいいかい?まず、助けてくれてありがとう。僕はジルベルト・ケアルズ。もともとラヴィアナの屋敷に仕える執事一族に生まれたんだけど、色々あって。今はこのパーティーで補助魔法使いをしているんだ。あと、この騒がしいやつは鏑木宵。ほんと、宵が迷惑かけたよね。ごめんね。こいつも悪いやつじゃあないから、仲良くしてやって」


「あ、はい。その、お願い、します」


へえ、パーティーを組んでいたのか。魔法使いが二人もいるなんて珍しい気がするけど、そもそもこのあたりにあんまり冒険者が来ないから普通の構成もわからないのだが。でも、この二人が後衛なら宵さんという人は前衛、もっと言えば戦士とかタンクなのかな?すると、彼らの背後に人影が忍び寄ってきた。


「お前ら……、何勝手に人の悪評を初対面の人に広めてんだ!メイヨキソンザイだぞ!犯罪だぞ!」


「いやいや、僕達は宵が事実やったことしか言ってないんだけど?」


「ゔっ、そ、そんなことないよう。ねえ、ラヴィ?」


「メイヨキソンは事実ではないことを言うとアウトなのよね?なら、私達は事実しか言っていないから無罪ではなくて?」


「ゔっ、ああ、もう黙れー!!」


うわあ、この三人仲良いんだなあ。私の存在がなくなっているみたいに三人で言い合っているこの人達を見ていると、ふと、私も人間に生まれたらこんなふうに暮らしていたのかな、なんて考えていた。お互いにほとんど関わることのない魔族からしたらありえない光景だから、不思議でもあり、羨ましくも感じてしまった。


そこまで考えると、私は思考を振り払った。これ以上考えても自分が虚しくなるだけだから。


私が少し暗い表情をしていたからか、ジルベルトさんが「大丈夫?」と聞いてくれたから、急いで笑顔を作って「だ、大丈夫です!」と答えた。


「それにしても困ったな。宵があれだけ大怪我してると野宿は厳しいよなあ」


「いやいや大丈夫だよ!ほら!元気だから大丈夫!」


「何言ってるのかしら?立ち上がっただけでふらついてるのだから野宿なんて無理でしょう?少し歩いてでも村を探して泊めてもらったほうがいいわ」


「ううん、どうしようか。このあたりは土地勘ないしな……。あ、そうだ!君、ここにいるのだからきっと近くに村があるんだろう?どうか君の村に宿泊させてはもらえないだろうか。」


「は、はい!その、大丈夫、です」


向こうから話題を出してくれたおかげで私の村に招待することができた。このまま歩いても、それこそ私の村ぐらいしかないはずだから来てくれたほうが安心だ。森を彷徨ってたらまた魔物に襲われかねない。万全の状態じゃない今襲われたら、きっと対処しきれないはずだから余計危なくなる。


「ありがとうございます。では、早速案内していただいてもよろしくて?早く宵を休ませてあげたいのですわ」


「あ、わかりました。えっと、こっち、です」


「ねえ!ほんとに大丈夫だってば!もう傷は治ってるし、足は怪我してないから歩けるし。わざわざ村でお世話になるなんて申し訳ないよ!ほんとに大丈夫だから野宿しよう?」


「…宵、ここは君が居た世界とは違うんだ。傷が治ったからって、体が万全の状態になるわけじゃないんだよ?そのことを理解しておかないと、いつかほんとに死んでしまうよ。君はもう少し人に頼ることを覚えたほうがいい。それに宵はみんなを魔物から守っているんだから、世話になって当然だ。断るほうがおかしい」


「………、ごめんなさい」


あ、頑なに断っていたのは申し訳なさからだったのか。さっきジルベルトさんが言っていたけど陽キャなだけで悪い人ではなさそう。今は少し萎縮してしまっているみたいだけど元気な人だし、何より人を思いやれるんだから。でも、思いやるあまり自分を蔑ろにしてちゃ本末転倒だよね。それ故、私はジルベルトさんが宵さんに話してる間、心のなかでたくさん首を縦に振っていたのだが、まあ、気づいてないほうがいいだろう。


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