第10話 レンタル彼氏
時刻は1時半。
待ち合わせは……この公園か。
時給2500円とかいう破格すぎる値段だったから飛び付いたこの仕事……まぁいわゆるレンタル彼氏。
「白のワンピースに……麦わら帽子を被ってる……のか」
スマホから相手の服装の詳細が分かったところで、俺は辺りを見渡す。
───あれか?
見てみると、木にもたれている女性の姿があった。
日差しが彼女の帽子に差し、しかしながら影が彼女を包んでいた。
「様になるな」
遠目から見ても美人なのが分かる。
まるで、漫画の一面から切り抜いてきたようだ。
「えーと、
俺は手を振りながら彼女に駆け寄った。
「っ……えーと……龍さん……ですか?」
「そうですねー」
「もー、遅いですよぉ?普通、レンタル彼氏をやるなら、まずそちらが最初に居るもんなんですからっ」
ぷんぷんと頬を膨らませて、顔を前に、そして両腕を腰についてそう言った。
「すんません……初めてなんで」
「初……めて?」
困惑したような表情を浮かべた。
「えーと、はい?」
「───えへへ、実は私も初めてなんですよ~っ」
えぇ?それじゃあ、初めてなのに俺に注意したのかっ?……んー。
「ごめん、ごめんってばぁ……。こう……なんだろ、毅然とした態度の方がいいかな?って思ってさ!」
「な、なるほどね……?」
それはよく分からないんだけども。
てか……なんか思ったより気さくな方かな?
「そ、それじゃあ……行こうか。遊園地……だよな?」
「うんっ!早く行こっ?」
「……ああ」
それから、俺たちは遊園地へと赴いた。
「てか……ありがとうな」
「いーよ~っ!全然っ」
奢ってもらうのは少し気が引けるけど……こういうのは普通なんだろうな、レンタル彼氏ってのは。
「ほんとっ、真面目だねぇ~っ?」
「えぇ?」
「いいや?なんもないよ~だっ」
少し小馬鹿にされたような感覚がした。
「な、なんなんだ……?」
「あ、あのさっ!ジェットコースターに乗らないっ?」
唐突に彼女はそう言う。
「んー、いいよ」
めちゃくちゃ俺苦手なんだけどな。
「いや……昔私友達とか居なくてさ……男なんてましてや……あはは。だから、一緒に乗るのが夢だったんだよね~っ」
「そうなのか」
俺もなんだけどね?
「それじゃあ乗ろっ?」
「───ああ」
覚悟を決めて、俺たちは場所に向かった。
───それから数時間後。
「今日は……ありがとうな」
色々遊んだな……メリーゴーランドとか、ジェットコースターもだし、カフェとかも立ち寄ったし。
「ふふっ、何言ってんの〜?」
「え?」
「今日もになるんだよ?これから」
またまた冗談を……
まぁ、でもいいかもしれないな。
「あははっ、うん、そうだね」
「それじゃあね?」
「ああ」
俺は手を振って彼女を見送った。
もう、日は下ろうとしていた。
───翌日。
俺は朝の支度をした後に、スマホを見る。
すると、1件の通知が。
『ごめんっ!金は払うからさっ!会いたいかな~って 。その……隣にでも居てほしいっ』
そう俺の元に届いていた。
「んー」
まぁ、いいかな……
だけど、最後にはしておこう。
『いいよ。でも、金は大丈夫』
そう送ったのだった。
「よし、ここだな」
例の公園に着くと、彼女が嬉しそうに俺を待ち構えていた。
「お、お金……い、いらないの?」
「───ああ、大丈夫だよ」
申し訳ないもんな。
「えへへ、それって……もうレンタルじゃあ……ないってこと……かぁ。ふふっ」
小さな声でそう呟く。
「んー、どうしたんだ?」
「いいやっ?ふふっ」
意味ありげな笑みを浮かべるもんだから、気になって尋ねた。
「なんだよーもう」
「知らなくていいよ〜っ!こっちの話っ!」
やけに元気だな。
「それじゃあ、次は……映画……見に行こっか?」
「ああ」
俺たちは映画館へと行くこととなった。
「うげぇ」
ホラー映画だと……?
俺の苦手なやつじゃねぇかっ!
「どうしたの?もしかして……怖い、とかっ?」
「うっ」
「あははっ、図星じゃんっ!でも大丈夫だから……だって……」
「ん?」
「やっぱり、なんでもない~っ!」
なんだろう?
まぁいいや。
───それから1時間ほど経って、映画がクライマックスの時だった。
「っ」
怖いって、
めちゃくちゃ怖いって。
「ふふっ……」
不意に、左手が暖かくなった。
───誰かの手が被さってきたからだ。
「えっと……」
「ね、言ったでしょ?大丈夫だって……えへへ」
「っ」
赤面で彼女はそう言う。
……こっちまで恥ずかしくなるよ。
「ありがとうな……?」
「どういたしまして~っ」
俺はそれからというものの、集中できなかった。
まぁ……怖くなかったと言えばそうなのかもしれない。
そしてその後、アイスクリームを買うことになった時だった。
「えと……アイス買ってくれる……の?」
「うん?それがどうかしたのか?」
「いや……なんもないけどっ……ただ、私はレンタルしてるからさっ……なんか、申し訳なくて……」
「いや、良いんだよ、そんなの。俺が奢るって言ってんだよっ!」
「ふふっ、ありがとう……ね?」
「ああ。それじゃあ、そこで待っておいてくれ」
こうして俺はアイスの屋台に向かい、品物を買ったわけだが……戻ると問題が発生していた。
「や、やめてくださいっ!そ、そんな強引に……っ」
瑠璃さんの持っているカバンを引っ張って盗もうとしている奴がいた。───男だ。
「おい……やめろよ」
俺はすぐさま駆け寄り、彼女を安心させる。
「ッチ」
男は舌打ちをすると、人混みの中へと入り、姿をくらませた。
「あ、ありがとう……」
「いいよ、全然」
「優しいんだ……ね?」
「んー、そうかなぁ?皆すると思うけど」
そう言うと、小さな声で彼女は呟く。
「───そんなことないよ。龍くんだけ……だよ」
その言葉は、龍に聞かれることは無かった。
───そうして、
「二日続きで……本当にありがとう。楽しかった」
もう、日が暮れようとしていた。
解散の時である。
「経つの早いなぁ……はぁ、もうちょっと……」
彼女は少し言葉を詰まらせる。
「どうしたんだ?」
「───いや、なんも〜?ただ……もう少し一緒に居たいなって……あははっ」
悲しそうに笑っていた。
俺は、なんて言おうか迷った。
「まぁでも、これにて解散……だな」
「寂しいけど……うんっ……!」
「それじゃ───」
いや、それじゃあだったら、次があるのか。
さようなら……なのか?
そう思っていると、
「あ、あの……ねっ!」
彼女は勇気を振り絞ったかのように声を出した。
「う、うん?」
「その……明日も……宜しくね?……えへへ」
幸せそうな顔してそう言う。
「……」
「あははっ、それじゃあまたっ!龍く───」
俺は、意を決して言った。
「……ごめん」
「───え?」
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