第4話 自覚のない曇らせほど、与えるダメージは半端ない

会話が傍聴されてるなんて夢物語だと思い、あの後すぐに寝た俺は、起きて速攻ゲームをしていた。


「よし、【Clan】でブロンズ脱却したぞ~」


今、ソロでランクを回していたところ、始めてブロンズを脱却することができた。だから、ランクは現時点でシルバーだ。


「嬉しいな」


やっぱり、まいさんに色々教えてもらったのもあるし、舞さんの動画を見た甲斐あって……って、あれ?名前がよくよく考えれば一緒だな。


「偶然ってあるもんだな」


深く考えることはやめた。


「あー、そういえば……今日あいつが来んのか」


あいつ───霧立夕きりたちゆうが遊びに来る日だ。


「いうて2、3ヶ月ぶりか」


そもそも、【Clan】をやろうとしたきっかけが、あいつだったりする。……まぁ、強く熱弁するもんだし、俺はそれに釣られちゃったんだよな。


───ピンポーン。

部屋中にチャイムが鳴り響く。


「おっ」


噂をすれば……とやらだな。


「はーい。今開けるわ」


ドアを開けると待っていたのは、女ものの服に、長い髪、そして挙句の果てにはメイクをしていて……まぁ、誰がどう見ても美女だと答えそうな風貌をした人が立っていた。


「よぉっ!龍」


「おいおい、また……夕。」


こいつ、俺が大親友だからはっきり言っておこう。……どちゃくそにド変態である。


昔、電車で女性に痴漢された時に気付いてしまったらしい。───俺はMなんだ、と。


別に、そこまではまだ良いんだ。問題はここからだ。こいつ、あろうことか自身がMということから飛躍して、女性になって痴漢されたいとかいう特殊性癖に変わってしまったのだ。


……正直、どう飛躍したらそうなるのかは未だに分からない。


「俺が女を連れているみたいに見えるから結構やめて欲しいんだがな」


今の時代、女性は危険ということになっているから、その危険な人を招き入れる人も危険ということになっていて、世間体が良くない。───まぁ、そんな風潮は正直大嫌いなんだが。


「いいじゃないか。別に~」


それはそうなんだけどな。

なんか……ね?


「てか、今【Clan】はどんな感じ?」


「あー、今ちょうどブロンズから脱却してシルバーに上がったところなんだよ」


「おー、すげぇじゃんっ!いうて始めて間もないんだろ?」


「ああ」


「それは自慢できるな~!」


「うっす」


なんか友達に褒められると、こうもなんともいえない気持ちになるな。


「そうだ、今ハマっている人とか居んの?」


「んーと、舞さんかな。よく参考にしてもらってる」


「おー、かの大物配信者の舞ちゃんかぁ~っ!やっぱりあの方に痴漢───」


「黙れ」


「ちぇ~っ」


「てか、龍のアカウント見せてよ」


「ああ、いいよ」


俺はPCを立ち上げて、夕に見せる。


「あー、名前リュウにしてるんだな。龍らしいな……こういう適当なところ」


「うるせぇ」


そんな時、ピコンとスマホから通知が鳴った。

フォローしている人と言えば、1人だけ。


「ん?」


見てみると、【緊急配信】という名目で配信している舞さんがあった。


「どうしたんだろう?」


昨日と言い、今日と言い───疲れているのか?

それは心配だけども……とりあえず配信を開いてみるか。


『なんでですか?なんでですか?なんでですか?なんでですか?なんでですか?なんでですか?なんでですか?結婚まで誓ったじゃないですか?なんでですか?やっぱり好きじゃなかったんですか?』


開いた瞬間に、呪詛のように呟く彼女がいた。思わず俺は配信を閉じかけた。


んー。

なにこれ?


(どうしたの?まいちゃん)


(大丈夫?)


(疲れてる?)


(なんかやばいと聞いて)


───コメントは加速していく。


「あれ?舞ちゃんどうしたんだろうね?」


夕がそう言う。


『黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ。お前が奪ったのか私の……私のリュ───を』


発狂に近い声で舞さんがそう言った。

……甲高い声すぎて、ノイキャンが入ってしまっている。


「怖い~っ!」


わざとらしく夕は俺に抱きついてきた。


「やめろよっ!お前っ……!」


「あははっ」


笑い事じゃねぇぞ本当に……

俺はそういう趣味は無いんだ。


『あっ……がっ……あはははははっ、会いに行きます。待っててね?えへ♡』


急に普段通りの声に戻ったかと思うと、意味ありげなことを発して、配信は終了した。


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