土地星人

逆三角形坊や

土地星人

地球に到達した異星文明は、極めて特殊な性質を持っていた。

彼らは肉眼では観測できない「微生物サイズ」の知的生命体であり、人類はいかなる手段を用いても彼らの存在を認知できなかった。


観測されなかった理由は、小ささだけではない。

彼らの生命活動が「時間的に」あまりにも速すぎたのだ。

超小型種族の生活スピードは、人類の時間軸のおよそ 1/7,200 の速度で進行しており、人間の視覚の時間分解能では、その動きを処理することができなかった。


彼らは到着直後から、地球の「居住地区化」を開始した。

その活動は地球基準では観測不可能な速さで進み、結果として人類社会には「原因不明の症状」だけが散発的に報告されるようになっていった。

皮膚の発疹、植物表面の奇妙な変色、動物の体毛が異常に抜け落ちる現象。いずれも医学的には説明のつかない微細な侵食だった。


だが実際には、それらはすべて「異星文明による地球開拓の副作用」である。


彼らにとって地球の生物は、「未開拓の土地」でしかなく、人間の皮膚表面も、安定した建設用地として積極的に運用されていった。

超小型都市構造の形成に伴い、人類の皮膚は、まるで山が削られ舗装されていくように組成を変えられていく。


私たちは知らない。

いま、この瞬間も、あらゆる生命の外側が、別の文明による 「地表としての整備」を受けていることを。


彼らの都市は、すでに皮膚の上で繁栄している。

しかし、私たちは、そのことを認知することができない。


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