強いひとがお好き。

ぽか

彼の家 午後6時42分

「…んふふ、きて」


自分でも馬鹿だと思うような甘ったるい声。

でも、こーいうのが案外ウケるんだよね。

背中に手を回される感覚がして、自分の予想が当たったことを喜ぶように鼻を鳴らした。


徐に唇を押し付けると、向こうからも押し返してくる。まるで会話をするみたいに、お互いが少しずつ口を開いて、舌が触れ合う。

あ、ホック外したな。すけべめ。


肉厚な舌がべたりと合わさる度にたまんない。

やっぱり付き合っといてよかった。

勇太くん、柔道部の中でも特に凄いんだって。

筋肉だってムキムキで誰よりも肩幅広いし、うちの学校で1番強いんじゃないかな。


私は強い人が好きだ。

小学生の頃は足が1番早い子と付き合ってたし、

中学生の頃はサッカー部のアタッカーの子、

そして今は柔道部…我ながらモテてるよね。


目を閉じてお互いの口内を貪る。

激しく水音が響く中、バツン、と音が聞こえた。


物が落ちたのかな。

気にせずキスを続けると、段々と舌の上で知ってる味が広がり始めた。血の味だ。


彼の舌も、何か変だった。

1枚あるのに、もう1枚ある。増えてる。

まるで喉からまた生えてきたみたいな。


流石の違和感に目を開けると、彼の後ろに何かが居た。

紫っぽい、赤っぽい、白っぽいとこがある。

沢山のホースというか、拡大した血管が沢山繋がったひとつの人間?どちらかと言うと宇宙人だ。


勇太君の目は黒かった。暗いとこの猫みたい。

そして口からは1本、イカの手っぽいのが出てた。

それがずるりと抜けて、穴からは向こう側のホース人間が見える。


あ、勇太くん。死んだのか。

呆気にとられて、ホースの束の隙間から覗く沢山の目を見つめる。

心臓が。人生で1番ドキドキしてる。

呼吸が浅くなって、顔が熱くなる。

ぶるぶる震える唇で、そっと声を出した。


「付き合ってください…」


殺される人より、殺したひとよね。




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