どすこい!異世界転生
福岡太郎
プロローグ:海より見つめた、ひとりの漢
海は凪いでいた。高次意識体から神になりきれぬ未熟な名もなき亜女神が、
別世界の端で教育係である先輩海神に付いて「神とは何か」を学んでいた頃のこと。
彼女は、ただ静かに、海を見守っていた。
その日もある一隻の艦艇が、青い海原を渡っていった。
艦の上にはの青年が一人、甲板に立っていた。
小柄だが良く引き締まった逞しい体、焼けた肌、鋭い目つき――
彼は若き帝国海軍士官麗碓亜礪だった。亜礪の名前は名付け親と成った祖父が拘りを持って名付け次代を担う存在として着実に成長していくと言う意味だと今は亡き祖父から聞かされ亜礪(アキ)はその通りに育ちこれまで生きてきた。麗碓(レイウス)という姓は見事な石臼を作る先祖が当時の領主から賜ったものだった
亜礪は艦が沖に出るといつも海に向かって、今回も無事に帰って来れます様にと言って、千福と瓶にラベルが張られた日本酒を海に注いでいた。
それは何かの儀式なのか信仰なのか高次エネルギー体から神への階段を上る途中の高次データベースに接続できない経験の浅い亜神である彼女にはわからなかった。
けれどその行いは、不思議とあたたかく、男が注いでくれる。飲み物は美味しかった。
彼女は、その日から亜礪を見守るようになった。
彼は毎日毎日、一人甲板で鋼鉄製の装甲に張り手を行っていた。漢が毎日装甲にに張り手する為、彼の手形の大きさで装甲に塗られているペイントが剥げてしまい、其のたびに自分より階級が低い年嵩の兵曹から、勘弁して下さい砲術長と怒られてはいたが、上陸の度に亜礪が、甘いものを買い掌帆長である彼に差し入れしていたので、
「またですか・・・何れ装甲版も貫通してしまうんじゃないでしょうね!そうなれば武蔵は内内地に回航された後砲術長は陸軍に編入ですな素手で戦車を撃破する生体兵器として!」と冗談を言いながらも、ペイント作業の手配を運用班にしてくれた。
亜礪:「ハハその時は俺がカッターで敵さんの艦に乗り込み内側から艦底を破って、竜骨を鯖折ッてくるよ」と言いながら後頭部を掻き破顔した
掌帆長:「いや沈めずに、艦内を制圧して鹵獲して、この艦に金髪碧眼の義理の妹をプレゼントした方がよっぽど御国の為に成りますぜ!」
「ああ、わかった、アイオワ級の別嬪さんを連れてくるぜ!」
亜礪が行っていたのは相撲と呼ばれるこの国の国技だった。鹿児島県の田舎で育った亜礪は赤子の時に村の伝統行事として神社で行われた神事で土俵入りを行い、子供の時には近所の大人達に交じって相撲を取っていた、教練の一環で相撲を取り入れていた海軍は、亜礪にとっては渡りに船だった。
亜礪の相手は己よりはるかに大きな鬼のような兵士たち。砲術長遠慮はしませんぜ!」と言いながら屈強な水兵が亜礪に向かっていく
廃棄されるはずだった径が太いマニラ索を貰ってきて両端を繋ぎ円形として、土俵の代わりとして臺灣杉の板が張られた甲板上に置き土俵替わりとした。
亜礪は倒されても、押し出されても押し出されても、何度も何度も臺灣檜の板が張られた上甲板から立ち上がり立ち向かった。
「次は負けねぇぞぉぉぉおおおおお!!!もっと来い!!もっとだ!」
その叫びが、潮風に乗って女神の耳へ届くたび、
彼女の心も不思議と震えていた。
ある日、
亜礪は、初めてその力士崩れの大男を土俵の代わりの円陣の外に押し出した。
兵達の歓声。
そして、亜礪の額から滴る汗。
その瞬間――
女神は、己の心に“衝撃”が走るのを感じた。
「……熱い”……。これが、相撲……!」
彼女はそれを“原風景”として心に刻み、
この世界の相撲に深く感銘を受け相撲の事を調べ、亜礪の様に倒れても、倒れても立ち上がる者を支える存在に成りたいと思った。相撲を調べていた時に女将さんという存在と言葉を知りその言葉と女将の役割と響きが気に入ったので、まだ名の無い自分自らお神さんと名のる様になった。
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