そういや今年で300歳

ヘビーなしっぽ

吸血鬼


吸血鬼。

それは、恐らくこの世で一番か二番目辺りに有名な怪異だ。

…なんて、上から目線で吸血鬼。と言わせてもらったが、実際その存在なんて、あの3文字だけで十二分に伝わるだろう。

太陽が苦手。鏡に映らない。影ができない。聖水が苦手。十字架が苦手。ニンニクが苦手。銀の弾丸が苦手。毒が苦手。心臓を攻撃されると死ぬ。不死身、不老不死。変身できる。人間を食べる。人間を超越した攻撃力。

こんな事だって、言わなくたって伝わるだろう。

地域によって誤差があるかもしれないが、吸血鬼と言われれば大体これくらいだろう。


人間は、それを楽しんできた。

少し表現的にはそぐわないかもしれないが、事実そうだろう。

今ネットを漁れば、吸血鬼を題材にしたイラストも、漫画も、動画も、小説も、曲も。いくらだって存在するだろう。


ここで質問である。

そんなことをされて、もしそれを本物が見てしまったら、彼らはどう思うか。


例え話をしよう。

もし、人間ではないナニカが、人間を、今述べたように扱っていたら、人間はどう思うか?

人によって違うだろうが、大抵は怒るのではないかと推測する。


ここまで言ってしまえば、もう大体の予想はつくだろう。

これは、そんな不遇な扱いに嫌気がさした吸血鬼のお話だ。


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「…体痛っ」


彼は、体を左右にぐり、と捻りながらそう声を発した。

トレードマークの白髪が揺れる。

髪とは真反対の色のロングコートも、同じ様に揺れる。


「っはー、マジ人間って屑だわ」


男は、体を捻り終えてから、唐突にそう言った。

別に、その言葉を言うに値する出来事がこの一瞬のうちに起こったわけではない。

彼のため込んでいた何かが、ぽろっとこぼれ落ちてしまった様だ。そんな彼の声は、とても気怠そうな声だった。


「でも俺らはそんな屑の血がないと生きてけないとか…世も末だな」


男は快活にケラケラと笑いながら言いながら歩いていき、玄関の扉の近くの小さなテーブルの上に置かれている黒のハットと、同じく黒のサングラスを手に取った。


「ま、いいや」


男は、帽子を被り、サングラスを掛ける。


「んじゃ、ゴミの中でも更にゴミな奴らを殺しにでもいきますか!」


独り言が激しいが、彼は上機嫌にドアノブを捻り、今にもスキップしそうなテンションでどこかへ出かけていった。

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