枕言葉に「真の〜」とつくオッサンパーティーは自由気ままに旅をする

竹本 芳生

プロローグ 第1話

人口が年々減っていく田舎のコンビニ。しかも夜。人の気配は無い。

暗い街中で煌々としているコンビニの中から高校生三人組は帰ろうとレジから歩いて来るが、四十五歳のオッサン三人組もコンビニに入ろうと歩いていた。

タイミングは悪い。なぜなら二つの三人組はちょうど自動ドアでかち合ってしまったから。

何がどうしてなのか、その三人組が真正面からお見合い状態になった時、まさかの自動ドアの中心点に光る魔法陣が出てしまった。

六人が光る魔法陣に気がついて全員が地面の魔法陣を見つめたまま静止した瞬間、一際光ると六人はコンビニから消えた。

誰か来ていた雰囲気も誰かが来るような雰囲気も消え、レジにいた店員は首を傾げて何も無い自動ドアを見つめていたが一瞬で何もかも忘れたかのように店内の商品棚をチェックしに歩き出した。


「いった〜!何なのもう!」


六人は薄暗い部屋に膝をついていた。

高校生三人組はキョロキョロと周りを見回しながらブツブツと文句を言っているが、オッサン三人組はすぐさま立ちあがり目線だけで状況把握を始める。

高校生三人組は男子二人に女子一人で、それなりに見た目も小綺麗にしてるし気も使ってると分かる容姿。

オッサン三人組は一人だけ清潔感を醸し出しているが、悲しいかなオッサン故に小綺麗とは言いづらい容姿だった。しかも一人はいわゆる小デブとかぽっちゃりぽっちゃりとか言われるタイプ。

そんな六人を見つめる豪奢な格好をした年配の男性と見目麗しい男性一人と女性一人、そして同じ格好をした顔を隠した男性十人。


「よくぞいらっしゃいました!異世界の方々」


見目麗しい豪奢な女性が六人に声をかける。もはやテンプレとしか思えない状況にオッサンは表情を変える事なく見つめる。


「我等はこの世界を救って下さる方々を心待ちにしておりました。魔法の言葉、ステータスでどうかジョブをお教えください」


言ってる事がおかしいとも思うがとにもかくにもステータス確認は必要かと六人は言われたままステータスと呟いて確認する。

高校生三人組も立ちあがりホコリを払いながらステータスを確認する。


「ねぇ……どうなの?」


ヒョイと隣にいた男子高校生の前を覗くも何も見えない。


「え〜何も無いじゃん!」


「他人には見えない仕様なのかセーラのも見えないしな……」


そう。他人は個々のステータスが見えない。唯一見えるのは冒険者ギルドにある特別な石版だけという不思議設定がこの世界にはある。


オッサン三人組は集まってコソコソと何か相談しているが、悲しいかな三人組の声のトーンはとんでもなく低い。隣に行けば聞こえるかな?程度の音量である。


「ジョブ……?ジョブって……あ!俺、勇者だってよ!」


「まあ!素晴らしい!」


女性の声のトーンが上がり嬉しそうに微笑む。

そんな男子高校生の声に女子高校生もジョブを見つめ嬉しそうに笑う。


「私、聖女だって!ヤバくない!」


「俺は賢者だな」


「まあ!三人共、とても素晴らしいですわ!そちらの方々はどうですか?」


女性の微妙な問いかけに一番ガタイも良く一見するとコワモテに見えるオッサンが困ったように見回しながら答える。


「遊び人……だな」


「遊び人……ですか……聞いた事の無いジョブですわ……」


「あー……俺はデブだわ」


「俺はニートだな」


オッサン三人組は散々なジョブを言ったが、正直デブはジョブではないだろうと誰かツッコミを入れるべき所だ。


「やだ〜遊び人にデブにニートだって!社会のお荷物じゃーん!」


「だな」


「マジかよ……最悪だな」


高校生三人組も中々にヒドイ事を言っているが、周りの人物達もろくでもないジョブなんだと思い顔を顰める。


「あー……大したジョブでもないし、金とか装備?とかある程度貰えたら出て行くわ。どうせ元の世界に戻れないんだろ?」


「え……?」


「はい。元の世界へ戻る術はございません。ですが、私達も何もせずに追い出すような事は致しませんわ。陛下、せっかくの申し出です。何かしら持たせて出て行っていただきましょう。勇者様に聖女様に賢者様がいらっしゃったのなら問題もございませんでしょう?」


豪華な椅子に座っていた豪奢な男性が一つ頷くとその脇にひっそりと控えていた年配の男性が横でヒソヒソと耳打ちされる。


「そちらの三人組は金と武器や防具を渡す故、早々に城から出て行くように」


まさにテンプレな展開。何度となく見知った展開の異世界転移にオッサン三人組は静かに頷いた。


「ではついてくるが良い」


男性の後をついてオッサン三人組はゾロゾロと歩き出す。

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