死刑から始まる異世界宇宙開発

櫻澤宙大

第1話 転生

 「月には、莫大な魔力があるらしい」

 大漆の家のちゃぶ台でそんな話題が飛び出す。 俺は箸を止め、思わず視線を上げた。

 月、魔力、宇宙――。

 どれも俺にとっては他人事じゃない。 なぜなら、あの日のことを思い出すからだ。

  ――潮の匂い。森を抜けるそよ風。職員たちの叫び声。 あれは内之浦宇宙観測所での最後の仕事だった。 イプシロンロケットの二段目が発射直後に炎を上げ、発射管制室内に赤い光が流れ込む。

  「逃げろ‼」

 間に合わなかった。

 俺は意識を失った。


 次に目を覚ましたとき、そこは旅客機の中だった。 窓の外には、昭和のアメリカの街並み。 だが空港の表示には“UKA”と書かれている。

  アメリカ王国……? いや、そんなのありえない。

 警察が前後から乱入し、俺だけが連行される。 そして尋問をされる。JAXAの職員だと言い放った瞬間に、職員の目が丸くなる。

 そしてまたどこかに連行される。

 通された玉座の前で、目の前の男は淡々と言い放った。

 「宇宙開発をしあとある国より先に月に行け、さもなくば処刑する。するなら免除だ――死か、そらか、好きにするといい。」

  言葉が、頭を真っ白にした。 でも、思い出す。内之浦で学んだこと、成功させたロケットの数々。

 今度はこの異世界で、同じことをやるしかない。

 俺の第二の宇宙開発生活は、こうして始まることとなった。

 

 まずは、現在の状況を確認しに行くか。

 黒ずくめの男に、宇宙開発の研究をしている施設に行きたいと伝える。

「御意、すぐに準備いたします。」

「ああ、よろしく頼んだ。」

 さてと、じゃあ行きますか、この世界でも宙を目指して。

 自分の考えにうぬぼれていると黒ずくめの男たちが、

「天羽様、お車の準備ができました。」

「わかった、すぐ行く。」

 宇宙センターに、移動することになったので、車に乗り込む。


 

 未舗装路に1時間程度揺られ、ついたのは、何の変哲のないプレハブ小屋と、後ろにある巨大なビル。巨大なビルはあれなんなんだろうか。

 もしかして、このプレハブ小屋か施設?だとしたら粗末すぎだろ。ふつうもうちょっと事務所っぽい建物に本部置かないか。

「設立されてから数年しかたっていないので、まだ仮設置なんですよ、1回ロケットを山なりに飛ばせればいいって言われたんですけど……。」

 そうか、なら仕方がない。それにしても早く、正式な建物を建ててほしいものだ。

 俺がつけばいいポストはどこなんだ?

 そうだ、今組織の名前をまだ聞いていなかった。

「この組織の名前は、UASAです。」

「今日は短い時間だったがありがとう。」

 といい、現場を後にする。車に乗り込み、明日のことを想像する。


 

 車で連れていかれたのはただの一軒家。中に入ると日本人と思われる人がいた。

 あれ、なんか見覚えのあるやつが一人いるな。やっぱりだ。大漆じゃないか。

 大漆は高校時代の同級生で、日本で医師として勤務していたらしい。

 いやとんでもないエリートだな大漆。本当にすごいやつが同級生にいる。

「おお、天羽。お前もこっち側に来たか。まあ、こっちに来るのはしょうがない。で、王からの命令は何だ?」

「3年以内に、一種の動物を宇宙に送り出せだってよ。」

「これはまた難しいものを押し付けられたな。」

「そういやさ、あの王まだ、子供だけど摂政はつけないのか?」

「実はね、ついてるんだ。ここだけの話なんだけど。月に魔力が超絶あって、それを各国が血眼になって取り合ってる状態なんだ今。」

 そう、この世界、魔力が国家の命なのだ。

 魔力を最も多く持つ国は、経済、軍事、外交の3つの面で最強になるのだ。

「あっ、なんか、俺が宇宙開発しなきゃ処刑される理由わかったわ。」

 

 UASA情報曰く、耐熱プレートは、試験的なものが、出来上がっているらしい。

 あ、これ動物を使った打ち上げ実験できるんじゃないか……。

 明日王立動物研究所に行って、賢く従順な動物もらってくるか。

 そんなことを思いながら俺はゆっくりと目を閉じた。


 私は家のベットで寝ようとしていた。しかし何か、胸がざわつく。

 ――どこかで、魔力がこれから大きく揺れる。そう直感した。 意識を集中させると、11人の作業着、スーツ交じりの集団が浮かび上がった。顔までは霧がかかったようにわからない。ただ、何かこの家に関係あることだけはわかった。

 一人はJ〇〇Aのポロシャツを着ていた。

J○○A——何かどこかで聞いたことがある響きだ。

 その集団は、犬を高さ15メートルほどの円筒形状の先端部に犬を入れる。まるで鋼鉄の棺のようだ。

 そして、間もなく円筒状の物体が、虹色の炎を上げ宙へと飛んでいく。

 その時私は確かに冷や汗をかいた。

 何故なら……。

 

 私は、はっと目を覚ます。しかしそこは、いつもの自分のお部屋。ぬいぐるみも家具も動いてさえいない。

 私はすぐにメイドを呼ぶ。もちろん、一番信頼できるあの人を。

「お嬢様、どうされましたか。」

「少し変な夢を見ちゃって。11人の集団が、犬を円筒状のものに入れ、空へと飛ばしていたの。」

「お嬢様、それはU……。」

 私の意識はそこでフッと、遠ざかる。

 意識を失う前、私の周りにはほんのりと虹色の光が――淡く舞っていた。

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