第27話 記憶に残る巨大なモンスターとの再戦
ドズゥゥン……!! と、突如街中に響いた、闘技場にいる俺たちの元にも届くほどの鈍く重たい衝撃音。
「今のは……!?」
そう、俺が反応した直後凄まじいモンスターの咆哮が聞こえた。
「グギュルアアァァァ!!」
その近くで聞けば耳が割れてしまいそうな声。それはどこか聞き覚えのあるものだった。
「も、モンスターだっ……! モンスターの声……街にモンスターが入ってきたんだあっ……!!」
観客席にいた一人の男からそんな、震えるような声が発せられた時、観客席にいた大多数の人々が焦り始め、そこから離れようとする。
「まさか、そんなことが起こったっていうの!?」
その騒ぎで発せられた声を聞いてセツナは俺にそう問う。
「そうみたいだ……ギルドの出入り口が観客によって塞がれる前にここから出よ——」
と俺がセツナに提案しようとした時、あまりにも大きな手によって闘技場の壁が破壊された。
「なっ……まさか!?」
そう言って破壊された壁の方を俺たちが向くと、そこにはやはりと言うべきか、高さ6メートルほどのサイズの巨体がそこにはあった。
そのうえこちらもやはりだが、その巨体。それは俺の記憶にこびりついていたモンスターの姿で、同じ個体なのか別個体なのか大きさが3メートルほど記憶のものよりも大きいが、その他姿形はそれそのものだ。
「さ、サイクロプスだァァ……!!」
その姿を視界に入れた観客はまたもそう叫び、焦り、その場から逃げようとドタドタ走り回る。
(サイクロプス……それがアイツの名前か!)
瞬間、俺の手のひらから桃色の波が放たれた。
「ねんりきっ!!」
「えっ!?」
俺がスキルをそのサイクロプスと言われたモンスターに向けて放つと、セツナがそんな声を喉から吐き出す。
「俺はアイツと戦う! セツナは傷がひどい! 今のうちに逃げておけ!」
彼女は俺に試合でかなりボロボロにされた。会話を交わせる程度とは言え、それでも身体を動かすたびに痛みが入るほどのものだろう。
「ちょっと待って……! そ、そんなのあなたも……その身体であんなモンスターと戦うだなんて!」
「……確かに。うっ! 思い出した瞬間に腹部に痛みが——!」
彼女に言われるまで自分も少し骨がやられるくらいの傷を負っていることに気がついた。
それにより俺は痛みを感じてしまった。
「何やってるの!? と、とにかく逃げる—-」
そうセツナが俺に向けて言った直後、ドスンとあの巨大の足が地面を押し込む音が聞こえた。
サイクロプスは俺の方に走り始めた。
「ははっ……さっきのスキルでこっちに注意が向いた。もう逃げられないみたいだし俺は戦うよ」
「そ、そんな身体じゃあの巨大には敵わない! 絶対に逃げた方がいい……!」
「サイコエンチャント」
そんな彼女の言葉を俺は、スキルを発動させて剣を強化し、サイクロプスと戦闘をすると言う意思を見せて否定する。
そうして俺は向かってくるサイクロプスの方に剣を構える。
「ここで誰かが食い止めないと観客が危ないしな。とにかく俺はこいつの相手をする——よ!」
セツナにそう告げたのち、ドンっと踏み込んでサイクロプスの方へ俺は走り出す。
「グギュオオッ!!」
そんな声と共に俺に向けて大きな右手が振り下ろされる。
(この腕、スピードはセツナの剣が振り下ろされる程度みたいだ。であれば避けることは——)
「できる!」
そう言って俺はそいつの股下に飛び込んで屈んでくぐり、その腕を回避しながら背後に回り込んだ。
「はあっ!」
と同時に素早く強化されたその剣で大きな巨体の足に斬り込みを入れる。
「ねんりきっ!」
すかさず俺はスキルを放ち、サイクロプスにダメージを与えた。それなのに……
「くぅっ、ダメージを受けているようにはまるで見えないなあ……!」
俺の攻撃はまるでサイクロプスのダメージになっているようには見えなかった。
「グオオッ!」
そんな声と共にサイクロプスは俺に向かって素早く手を下ろす。
俺はそれをなんとか回避するが、バガンッ! と闘技場の地面が破壊される。
(
そう思いながら俺は立ち上がり、サイクロプスに攻撃を仕掛ける剣の構えを作った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます