第4話 ゴブリンとの戦い

俺は街の近くにある森にきていた。この森はスライムやゴブリンなどのいわゆるザコモンスターの溜まり場となっているそうだ。

 「ゴブリンはどこにいるのかな」

そんなことを呟きながら森の奥へと進んでいく。


 「スライムならそこそこいるけどゴブリンとか他のモンスターはいないなあ」

森は思っていたより静かだ。音があまりしない。そよ風が吹き、木を揺らす音とスライムが移動するときのねちょっといった音、後は俺の足音だけだ。そうして森の奥に進みながら音を聞いていると聞き慣れない音がした。

「俺のものとは違う足音がする。あっちの方向か?」

逃げられては困るから足音を消して音がした方向へと進む。


 「いた、あれだ」

 草むらに潜む、人型だけど人には見えない痩せかけたような骨格が浮かび上がる緑色のボディが目の前にあった。まるで、キレたどこかの母親のような形相をしている。そんなモンスターがゴブリンである。まさにあれであった。そうして俺はそのゴブリンの足元にスキルを放つ。

「サイコクラッシュ!」

やつの足元にピンク色の円形が浮かび上がる。

 「ギギャ!?」

 ゴブリンはその円形から逃げるようにして移動する。俺のスキルの爆発は空気以外に当たることはなかった。

 「!?」

 その結果に思わず俺は動揺してしまった。

「まさか避けられるだなんて……!」

 ああ、そうだ。ゴブリンにはスライムとは違って知能がある。スキルがくることがわかるのなら避けてくる。知能があるならばそれくらいは当たり前だ。

 直後、ゴブリンがこちらにまっすぐ走ってくる。

 「グギャアッ!!」

 「ははっ! 知能があるとはいえ動きは単調だ! ねんりき!」

 桃色の波がゴブリンに直撃しその緑のボディから赤色の鮮血が跳ねる。が、ゴブリンは怯まなかった。血が出るほどのダメージを負ってなお直進を続けていた。


 「な!?」

 ねんりきを受ければ怯むと思っていた俺は、その隙をつかれ懐に潜り込まれる。やつは右手を大きく振りかぶる。そんな瞬間に俺は剣を引き抜き、その右手に剣を振る。

 「グギャアッ!!」

 やつの右手が俺に当たる前に剣が、それの動きをとめた。が、俺の剣では威力が足りず、腕を切り裂くことはできなかった。

 「……っ! 攻撃力が足りないか……!」

 瞬時に俺は一度バックステップで距離をとる。そのまま離れた位置から俺はねんりきを叩き込む。


 (よおし、今度は怯んだ。確実にダメージは入っているんだ)

 俺はさらに距離をとる。その間にやつは直進してくる。

「サイコクラッシュ!」

 やつの進行方向にピンクの円形が浮かび上がる。その直後自分からサイコクラッシュの範囲に飛び込んだやつの身体は爆散していた。

 「ギギャアァッ!!!」

 そんな断末魔と共に俺のレベルが上がり、10から11になった。

 「ふう、スライムよりは手強かったな。まあ結局のところ知能があるとはいえ、頭がいいのは言えないのだ。さて、帰ろう」

 そうしてきた道を戻っていた俺であったが、そこで違和感を感じた。

 「お、おいおい、なんだこれ……。聞いたことのない、あまりにも重い足音だ……」

 耳をすまさずして聞こえるほどの重い、大きな足音がした。ズシン、ズシンと鳴り響くゴブリンとは比べものにならないほどの重い足音。音を出しているそいつはきっとゴブリンの3倍ほどの体格はあるだろう。 もちろん、そんなやつは今の俺が勝てる相手ではない。のだが同時に甲高い、人間から発せられたであろう悲鳴がそちらから響くのだった。

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