翌日、早朝に俺は家を出た。いや、追い出されたという表現の方が正しいのかもしれない。

　天職を貰い、家を出て、旅立つ人はたくさんいる。大体の人は親から別れの言葉やらなんやら言われて旅立つのだが、俺にはそのようなことはなく、一言も言葉を交わすことなく家をでた。

　「はあ、どこに行こうか……」

　生きていくには金を稼ぐ手段と宿が必要だ。この世界で金を稼ぐ手段というとメジャーなのは冒険者だ。モンスターを倒し、金銭を稼ぐ。旅立つ人の中には、そんな冒険者を夢見て旅立つ人も多い。俺も昔は冒険者に憧れたものだ。

　「よし、とりあえず冒険者になろう。どうせ戦闘向けの天職の俺が経験もなしに雇ってもらえる仕事はあまりなさそうだし、天職があれば無条件になれる冒険者が多分一番俺の適正だ。近くに冒険者ギルドや宿がある大きな街があったはず」

　その街は、かつて俺が両親と行った場所だった。昔の、若い（今もまだ若い部類だが）俺が冒険者に憧れたのはそこでたくさんの冒険者を見たことからだ。かっこいい武器や防具を着て、モンスターを討伐するクエストをこなす人々に憧れたのだ。

　そんな過去を思い出した俺は、未来へ向けてその街へと一歩、また一歩と足を踏み出すのだった。

　そうして俺は数時間ほど歩いて街へ着いた。その街はいわゆる洋風の建物が並び立ち、そこの真ん中にはこの街の象徴ともいえる冒険者ギルドが立っていた。すぐに俺はそこへ訪れ、そして俺の体は吸い込まれるようにギルドの中へと入っていった。中はたくさんの冒険者で賑わっている。

　「おお･･････すごい」

　思わずそう言葉が漏れた。

　「いつぞやかにきた時は窓口で冒険者登録をするのだと教えてもらったっけ」

　かつて両親ときた時のことを思い出す。そうして窓口に視線を向けると推定13歳ほどの黒髪ロングのお姉さんが立っていた。俺は彼女に話しかけた。

「すみません。冒険者になりたいのですが」

お姉さんは、「はい！」と元気な声で答えると冒険者登録の方法を話し出してくれた。

「こちらのプレートに手をかざしてください。こちらのプレートはあなたの名前や天職を映し出してくれます。その情報をこちらが保存することで冒険者登録が完了します」

言われるがままに俺はプレートに手をかざす。するとプレートがひかり、俺の手をつつむ。

「おお！」

　5秒ほどたつと光は消えていて、お姉さんは話しだした。

「これで登録が完了しました。こちらの冒険者カードはあなたが冒険者であるという証明書となります。これがある限りあなたは冒険者です」

するとカードが手渡される。そこには俺の名前、天職、そしてレベルが記されており、

『見上智也

天職　エスパー

レベル4』

と書かれていた。レベルが4なのはかつて父にスライムという、最弱モンスターを何度か倒すという訓練をさせられていたからだろう。

　そんなふうに俺がカードに目が奪われているとお姉さんの声が耳に入ってくる。

「それでは行ってらっしゃい！」

　そうして俺の冒険者としての人生が始まったのだった。