記憶の喪失と復活の兆し

「ウンラン! そっちに行ったぞ!」

「はいアル!」


 ウンランの鋭い一撃がオークを切り裂く。

 何故だか、ウンランはこの前の一件から剣の鋭さや魔法の精度が上がったように思う。


「ウンランやるようになったわね」

「んーそうなんですけどなんか引っかかるんですよね」

「というと?」

「なんか元のウンランさんらしくないというか……魔力に混じりものがあるというか……」

「混じりもの?」

「……いや多分気のせいです。気にしないでください」


 混じりもの……。

 魔法のエキスパートであるアカネが言うのだから何かがおかしいのだろう。

 ただ

 ウンランは初めから

 特にトラブルもなく、一緒にパーティーメンバーの追放の会議にも参加した……はずだ……。

 一瞬、俺にも強力な違和感が頭をよぎる。

 ……いや気のせいだろう。


「とりあえず今日も依頼は完了だ。帰るぞ!」


 俺は気がついていなかった。

 いいや俺達正義の栄光グランドジャスティスは気がつけていなかった。

 この違和感こそが、大切だったのだと。


――――――――――――――――――――


「いやはやまさか、こんなに早く魔王様が復活なされるとは思いもよりませんでしたな」

「これも何もかもダーフ支部長、貴方が拾ってきたあれのおかげですな」

「滅相もない。あれは思いもよらない拾い物でしたがね」


 暗闇の中、会話が聞こえてくる。


「そういえば……昨日魔王様に謁見した際の正義の栄光グランドジャスティスのやつらの姿といえば滑稽でしたな」

「あれだけ、国内最強と謳われた正義の栄光グランドジャスティスも魔王様の魔法の前にはなすすべもないというのは本当に滑稽でしたな」

「完全ではないにしろ、魔王様が復活なされた今我々がなすべきことは魔王様のための世界を構築すること。そのためになすべきことは……」


 チラリと1人の老人がダーフの方にチラリと目を向ける。


「わかっております。まずはギルド内の不穏分子を排除。後にギルドと国、全てを魔王様に献上すると約束いたしましょう」

「うむ。わかっておるのなら良い」

「計画のためにミナカ副支部長の殺害許可をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ミナカくんか……。優秀ではあったが反魔王であったな……。致し方ない。許可しよう」

「ありがとうございます」

「くれぐれもギルドメンバーにはダーフ支部長、君がやったとバレないようにな」

「心得ております」


 ダーフはそれだけを伝えるとスーッと暗闇の中に消えていった。


「やつも食えぬものよな」

「全くだ。魔王様が完全に復活なされた暁にはやつも消さねばならんかもしれんな」


 暗闇の中で会議は続く。

 魔王が完全に復活した後の世界を夢見て。

 

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