おまけ 健吾と愛理

【作者注】

今回のお話には、倒錯的な性的描写が含まれています。

苦手な方はご遠慮ください。

また、公共の場でのこういった行為は法律に抵触する可能性があります。

本作品は、違法行為を助長するものではありません。

あくまでもフィクションの物語としてお楽しみください。


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★


週末になると、健吾と愛理は決まってホテルで過ごしていた。

ただ、その日は部屋に入ったとき、健吾がふと口にした。

「今日は、このままカフェに行かない?」


愛理は驚いたように目を見開いた。

これから、いつものように健吾と肌を重ねるつもりだったのに、その期待は不意に外された。

胸の奥に、ほんの少し残念な気持ちが広がる。

しかし、たまにはカフェで健吾とお喋りするのも悪くない。

お楽しみは夜にとっておこう。

そう思って、小さく頷いた。


すると健吾は、かばんから小さな袋を取り出した。

「じゃあ、その前に……これ、つけて」

袋の中には、柔らかい素材なのに妙に歪な形をしたものがあった。

愛理には一瞬で用途がわかった。

そして、健吾がどうしてカフェに行こうと言いだしたのかも理解した。

愛理がそれを手に取ると、ためらいながらも、身体はぬるりと受け入れた。


ふたりが向かったのは、落ち着いた雰囲気のカフェだった。

木のテーブルと深い色合いのソファ。

窓際の席からは、ガラス越しに外を歩く人々の姿が見えた。

愛理はワンピースの裾を気にしながら、そっと腰を下ろした。


コーヒーが運ばれてきて、ふたりは向かい合って話し始めた。

他愛のない会話。最近観た映画の話、職場のちょっとした出来事。

健吾は、愛理の笑顔を見ながら、おもむろにスマホを取り出し、画面をそっと指でなぞった。

愛理の肩がわずかに揺れた。

カップを持つ手が一瞬止まり、視線が宙を泳ぐ。

だが、すぐに何事もなかったかのように微笑みを戻す。


健吾は、話題を変えながら、スマホの画面で指を滑らせる。

愛理は、カップを持つ手を震わせながら、なんとか笑顔を保とうとしていた。

外を歩く人々の視線が、こちらに注がれているように思えて、愛理は落ち着かなかった。

「……ね。そろそろホテルに戻らない?」

「もう少しゆっくりしようよ。そんなに急がなくても、ホテルは逃げないよ」


愛理はスカートの裾を押さえ、必死に堪えていた。

けれど、波のように押し寄せる感覚は、もう誤魔化しきれなかった。

健吾が指先を素早く走らせた瞬間、愛理は小さく息を呑み、身体を小刻みに震わせた。


愛理は荒い息の合間に涙をにじませながら言葉を絞り出した。

「……ねえ。まだ続けるの? もう無理」

「わかった。コーヒーを飲み終わったら帰ろうか」

そう言って、健吾はゆっくりとコーヒーを口にした。

その後も、健吾は指を滑らせ続け、愛理は何度も身体を震わせた。


ホテルに戻って、愛理が熱を帯びたそれをそっと取り出すと、健吾が話しかけた。

「たまにはカフェも良かったでしょ?」

愛理は少し考えてから、静かに頷いた。

「たまにはね。でも、やっぱりホテルが一番いいよ」

そう言って、愛理は健吾の胸に身を預けた。

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週末デート、カフェに行くか?ホテルに行くか? 神松寺和尚 @sinshoji

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