姉の場合


 もうすぐカナタの誕生日だというのにルミナはカナタとケンカしてしまったみたいだ。


 まったくあの子ときたら。勝手にカナタの部屋からマンガを借りて読んで、あげくに汚しちゃうなんて。しかも聞けば、友達から借りてたマンガだそうじゃない。そりゃカナタだって怒るよ?

 おまけに「ヒナタねーちゃん、お金貸して!」とか。誕生日プレゼントを買う予算が足りなくなりそうだなんて知ったこっちゃ……ハァ、カナタのためか。仕方がない。誕生日にケンカしたままだとスッキリしないだろうし。誕生日プレゼントのグレードが下がっちゃうのはカナタが可哀そうだし。何を贈る気か知らんけど。うん、カナタのため。なんだけど。ほんと、ルミナってば図々しい!


 でもその図々しさを時に羨ましく思う。私じゃ、カナタにそこまでグイグイいけないもの。

 昔は、ねぇ。「おねーちゃんなんだから」とカナタばかりが両親に構われて、ズルいって思ってた時期もあったけど。ルミナの面倒も私がよく見てたし。でもさ、死にそうな顔で「おねーちゃん、ゴメンね?」なんて言われた日にゃ嫉妬心なんて吹き飛んじゃったよ。

 そういや初めておねーちゃんとカナタに呼ばれた時、とっても嬉しかったっけ。

 去年は同じ中学に通えて嬉しかったなぁ。一緒に登校したりしてさ。入学式に、初めてカナタのセーラー服姿を見た時、本当に生きててよかったーって思えたもん。

 逆にルミナはズルいズルいってうるさかったけど。……来年はカナタとルミナが同じ中学でお揃いのセーラー服か。チェッ。ルミナってばズルいな。

 あ、そうだ。カナタが私と同じ高校に入ればいいんだ。そしたらまたお揃いの制服で同じ学校に通える。

 そうだね、たまにはルミナを見習って図々しくしてみようか。

 カナタに、うちの高校は楽しいぞーって。だからうちの学校においでよって。

 気の合う子が集まるし、行事は中学より本格的だし、バイトだってやろうと思えばできるし。それに、はい、ドン! 私がいるし! なんて、ね?

 フフフ、いいね、未来の話。

 カナタのこれからには楽しい事がまだまだ待ってるんだよって、人生の先輩たる私が教えてあげたい。

 あ、そうだ。誕生日プレゼント、私のマフラーの色違いを贈ろうかな? 肌触りもいいし、私は気に入ってるからカナタもきっと気に入るハズだって。

 フフフ、そしたら再来年はお揃いの制服にマフラーで一緒の高校に通えるね。羨ましいだろー、ルミナ?


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