イレーム=ユメイミア・キソ=シュビス・テ・マーパルテ=アムルサヴァ

四賀翠

プロローグ

















◆   ◆   ◆






『すまぬな、ソラタン。あとの事は任せた。』




 まさか。

 ニーオ・ソラタンは震える手で紙を握った。




 父が軽挙妄動を起こすとは考えられなかったが、暗がりのなかに置かれた紙片の文字は明らかに直筆であり、月光に照らされた寝室の様相は、事実と物語っていた。




 体は主を失った寝室をうろつくばかりで、何も考えが思い浮かばない。




 俺が領主に。

 良主として民から慕われ、一昨年までの北方戦線での軍人としての活躍ぶり。比べ、取り柄もない箱入りが。




 いっそ、誰かに領主をやってもらったほうが―。




 耳にフクロウの夜鳴きを覚えた。

 ニーオは静かに父の寝室を抜け出し、冷え切った石廊を駆けた。









































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