第2話 二つの力

地下街の夜空は常に重い雲に覆われていた。光輝は千紗に連れられ、廃墟となった商業施設の屋上へと向かった。


「ここからなら見えるはずよ」

千紗が指さす先には、帝国軍の補給基地が巨大な光の塊となってそびえ立っていた。


「作戦は?」光輝が尋ねると、千紗は苦笑いを浮かべた。

「作戦なんてないわ。リーダーが突然『今夜、行動開始だ』って宣言したの」


その時、下方から大爆発の轟音が響いた。帝国軍基地から炎の柱が天へと伸びる。


「始まった!」千紗が身を乗り出す。「見て!あの中心部にいるのが『黒い鳳凰』のリーダー、黒川 雷斗(くろかわ らいと)よ」


双眼鏡を通して映る青年。黒いコートを翻し、両手を広げている。すると奇妙な現象が起きた──周囲の風景が歪み、帝国軍兵士たちが凍りついたように立ち尽くす。


「何をしているんだ?」光輝が呟く。

「わからない……でも毎回同じよ。雷斗が何かをする度に、敵の動きが一瞬止まるの」


その隙に黒川雷斗が叫ぶ。「行くぞ、同志たち!」

彼の周りに集まった数十人の反乱軍が突進する。光輝はステータスボードを開き、敵の数と配置を確認しようとした。しかし─


【警告:解析不能な干渉波検出】

【敵情報の取得に失敗】


驚いた光輝が顔を上げると、雷斗がこちらを見上げている気がした。一瞬、目が合ったような錯覚。だが雷斗はすぐに視線を逸らし、次の指示を出し始めた。


「まるで僕たちを見通しているみたいだ」光輝が思わず漏らす。

千紗が頷いた。「彼には特別な力があると言われているわ。噂だと『相手の動きを予測できる』とか」


その言葉を聞きながら、光輝はステータスボードを再チェックする。


---


【保有スキル】

- 治癒力強化Ⅰ(Lv1)

- 隠密Ⅰ(Lv1)


【新規スキル候補】

6. 知覚強化Ⅰ(敵意察知能力+):消費15pt

7. 身体敏捷Ⅰ(回避率+):消費10pt


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「今は防御系の強化が優先か……」


光輝が「知覚強化Ⅰ」を選択した瞬間、雷斗の指揮下にある反乱軍が基地内部への突破に成功した。しかし司令部からの増援信号を受け取った光輝は、嫌な予感を覚えた。


「千紗、すぐにここを離れた方がいい」

「どうして?」

「西側から別動隊が接近中だ。挟み撃ちになる」


驚いた千紗だが、すぐに判断を下した。「撤退するわ。でも─」彼女は雷斗の方を振り返る。「私たちは見捨てられない」


その時、さらに奇妙な事が起きた。雷斗が突然、帝国軍の指揮官らしき男に向かって叫ぶ。「お前の次なる一手は北からの迂回攻撃だ!だが遅すぎる!」


指揮官の顔が蒼白になり、通信機を取り落とした。まるで雷斗が彼の思考を読み取ったかのようだった。


「見たか光輝くん?あれが雷斗の力よ。彼は敵の行動を正確に予測できるの」

「予測?そんな単純なものじゃない」光輝の直感が告げる。「あれは……読心術に近い」


---


戦闘が激化する中、千紗は光輝を連れて安全地帯へと移動した。途中で彼女は小声で言う。


「実は雷斗には別の秘密があるの。彼は毎晩、不思議な夢を見るらしい。そこには私たちの未来が映し出されていると」


光輝の頭に疑問が浮かぶ。自分のステータスボードと似たような、何者かの介入を受けているのではないか?


「ねぇ光輝くん、あなたに初めて会った時、変な胸騒ぎがしたの。あなたと雷斗は何か繋がっているのかもしれない」


千紗の言葉に、光輝のステータスボードが微かに振動する。


【警告:外部からの認証要求】

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