第7話 海辺に浮かぶ“提灯の列”
■取材記録:海辺に浮かぶ“提灯の列”
【取材日】平成二十九年八月
【聞き取り対象】S氏(四二歳・新潟県佐渡市在住)
S氏に採話をご協力いただいたのは、地元の呑み屋で話した翌日、彼の勤務先である町工場の裏手、小さな喫煙所であった。金属の椅子に腰掛けたS氏は、火のついていないタバコを指に挟んだまま、海から吹き上げる風に目を細めていた。
「夜の9時すぎでしたかね。ちょっとした用事があって、海沿いの道をひとりで車で走ってたんです。真っ暗だけど、街灯がまばらにあって、波の音が遠くに聞こえるような道です。で、ふと左手の崖のほうを見ると、上のほうに……ずらっと、提灯の列が見えたんです」
オレンジ色の光が連なり、風もないのにゆらゆらと揺れていたという。
「最初は地元のどこかの祭りか何かだろうって思ったんですよ。でも、そこには人の姿がまったく見えなかった。提灯だけが、まるで空中に浮かんでるみたいに光ってて。あきらかに変。怖くて急いで通り過ぎました」
S氏は、その場から少し離れたところに車を停め、スマートフォンで何枚か写真を撮った。だが――。
「あとで確認しても、どの写真にも光は一つも写ってなかったんです。ブレてるとかじゃない。そもそも“何も写ってない”。そのときはゾッとしましたね」
その後、地元の知人にその話をしたところ、笑いながらこう言われたという。
「『ああ、それは狸火(たぬきび)だわ』って。昔からたまに出るらしいんですよ、この辺でも」
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