第2話 すれ違う季節の中で
「まだ諦めてないの?」
友達の一人に言われた。
僕は苦笑いでごまかした。
「……まあ、癖みたいなもんかな」
「バカだね」
「うん、たぶん」
バカだって、分かってた。
でも、どうしてもやめられなかった。
君が朝、校門をくぐる瞬間に髪を耳にかける仕草。
体育祭のときに見せた真剣な顔。
雨の日、傘を忘れて笑ってた姿。
全部が焼きついて、僕を離してくれなかった。
ある日の昼休み、君がスマホを見て笑っていた。
その横顔を見ただけで、息が詰まった。
僕のメッセージは、まだ“未読”のままだった。
画面を閉じても、心の奥がざわめく。
それでも君の声が聞こえるたび、
そのざわめきが少しやわらぐ。
「今は誰も好きじゃないよ」
その言葉を聞いたとき、
ほんの少し、光が差した気がした。
嘘でもいい、と思った。
本気で、そう思ってしまった。
そして迎えた、10回目の告白。
放課後の校舎裏。
風が冷たくて、桜のつぼみが小さく揺れていた。
「……これで最後にする」
声が震えた。
言葉が、いつもより軽く響いた。
君は驚いたように目を見開き、
少しの間、沈黙した。
「ありがとう」
その一言が、まるで祈りのように聞こえた。
笑うでもなく、泣くでもなく。
君の表情がやわらかく変わっていくのを見て、
胸の奥で何かがゆっくり終わっていった。
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