「俺が一緒にいたらなぁ」


シュウ君は、何度も同じ話をしては、

そう言って少し不機嫌になる。


瀬戸君がそれ以降、一緒に帰ってくれることになったことが相当腑に落ちないみたいだ。


「仕方ないよ、シュウ君は勉強忙しいんだから」


ガタンゴトンと、小気味良く揺れる車内。

少し前髪が伸びたシュウ君はミナのその言葉に目を細めた。


サラサラの髪はシュウ君の王子様のような雰囲気をより一層際立てている。

知ってるよ。

あの子もあの子も、シュウ君を見てる。


毎朝同じ車両に乗るから、大体の顔ぶれは覚えた。

中にはシュウ君に話しかけてくる子もいたけれど、他の子にはそれ程愛想がよくないせいか、距離をなかなか縮められないみたいだ。


「眠いな」


ふぁ、と小さく欠伸をしたシュウ君が少しだけ屈んで。ミナの頭にコツンと自分の頭を乗せた。

ふわりと香る、シュウ君のシトラスのシャンプー。

ずっと変わらないこの香りが大好きだ。


「きゃ⋯!」


グリグリと、頭を擦り付けてくるシュウ君が可愛かったからか、近くで見ていたお姉さんが小さく声をあげた。


それに気付いたシュウ君は慌てたように頭を離す。


遠ざかった大好きな香り。

このままどさくさに紛れて、たくましい身体に抱き着きたいだなんて思うけれど、

そんな風に見ている人がいるなら絶対に出来ない。


「もうすぐ着くね」


誤魔化すように顔を背けたシュウ君。ジッと見つめてみるけれど、なかなか視線を合わせてくれなくて寂しい。

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