口術
Onfreound
口術
「桃太郎」が如何に醜悪に満ちた狂気の伝道であるかは、諸君も周知の通りである。そう、川上より拉致した身重の生した子を桃太郎と名付け、かの島民を虐し、宝物を強奪した悲劇である。勿論、諸君はあの獣畜達が何たるかも存じ上げている。犬は射ぬ、猿は裂る、雉は斬じを指す修辞であり、その残忍な情景を我らに物語るのである。翁の柴刈りが意図するものは何か?これも諸君にとっては、朝飯前といった所であろう。柴刈りとは死馬狩りであり、老父のそこはかとない血肉への欲望を描き出している。洗濯に行くとは?御尤も!選択と理解すれば、それが内含する合図も明白である。
では、諸君。一体我々が何の無知に覆われているか。この清明な視界を陰る蒙昧は何か。諸君!如何にもその斧である。かのスティーブンは、斧を己だと称した。何と愚かか!彼の無学、頓珍漢、一知半解、皮相浅薄っぷりには正に感嘆に資すばかりである。私はこの真理を暗闇から照明せんと幾年の問答を重ねたが、彼の突飛には片腹を抱えるのである。
しかし、qが如何に優れた童子であったかは、言語と化すのも難しい程なのである。qが3年前に書き上げた「判明の試み」の衝撃は、我々に驚愕を叩き付けたのである。「判明の試み」は、我々が囚われる仮説の幻覚、つまり文章番号f03293d2e9d3b1ad21bに秘された物語を発明したと告げるのである。qは、文章番号f03293d2e9d3b1ad21bに恋人の姿を見出す。1人は浮気相手の甘美な鞭に惹かれその下へ向かい、1人はその不安と苦痛からピストルを構えるのである。
qが物語を創出した経緯を述べよう。qはある日、いつも通りその無機質な記号の連続を傍観していた。今となれば、抽出機を用いて意図する所を把握するのが当然だが、qは賢明にもこの取組に徹したのである。すると、開拓から354分経ったある瞬間、『急にトークンが叫ぶのが見えた...1個ではない。20、否、30や40が一斉に咆哮した』。騒めきは一瞬のものであったが、qはその優れた認知力により対象をメモに留めた。以後、同日中計15回の徴候が見られ、喚起が示すものは次第に数を増していった。
広がっていたのは、海だった。荘厳な神社が見下ろし、人並が彷徨っていた。
「...写真」
「え?」
「写真でも撮ろうよ。せっかくだし」
そうだね!と明るい返事をし、スマホを構える。背後では夕陽が輝く。赤が刺しこみ、身体を覆う。
腕を伸ばし、その視角の中を眺めた。すると、ぎこちない笑みと共に、揺らぎ続ける洋装が囲われていた。
「あの、すみません」
「その、写真撮ってもらえませんか?」
「いいですけど...自分下手ですよ」
岩の上で型を作った。ピースをして、肩を組んで、笑顔を挺した。そして、無声のシャッターが切られようとしていた。
つくづく、残酷な営みだと思う。結局、川の静かな放浪を救い上げ、それに適当な味付を施すようなものじゃないか。時間は、ただ過ぎ去るのがその目標にある。もし恣意的な仲断に十分な企図が付されるとしたら......
時間を画くとしたら、無色透明であってほしい。渾沌ではあまりにも、仮定が音吐を残し過ぎてしまう。
「その、どうですか?」
「見せて下さい」
「ああ、上手ですね」
「ありがとうございました、わざわざ」
「これで良かったですかね、すみません」
四角に囚われたのは、島影だった。観光客はカメラを還し、その拙劣な発現を取り置いていった。
qが最後にその姿を現したのは15年前のことである。ある者は灯台の下で観測したと言い、ある者は某映画のエンディングに映り込んだと述べた。しかし、それは全くもって無意味な議論である。何故なら、我々が直視するのはqの思考、言語、意図するものの羅列であって、qがどこに在り、どんな環境に過ごし、どのような形状を取っているかではない。さて、qはその日、小さな理解を得た。qの説明は我々には極めて不明瞭に思われたが、即ち以下の通りであると結論付けられた。ある時を境に、生物は何故への探求を止め、如何にの誘惑に毒されてしまった。Nが姿を岩と化したのは、象徴的な出来事である。生物は公式を意味とし、意味を公式とした。
それこそが、qのある理由なのだった。傑出しているqは、「判明の試み」にて既に記していたではないか。『文章番号f03293d2e9d3b1ad21bは何の遺稿であるか?第1に、愛憎の不熟だ。恋人は疼痛を通じ、心地を錯覚し、尚且つ感知した。一方は不倫で、もう一方は銃弾で。しかし、それだけではない。よく読め。如何にこの謎を解いたか、改めて述べよう。qがいつも通りその技巧的な導出、言わば前時代的な把握に励んでいた時だった。急にトークンが叫ぶのが見えたのである。トークンに特異なるメッセージが付与されていたのだ。qがその構造を掌握するのは専門外である...規定は天則であるからだ。しかし、時に彼らが声帯を震わすことは、長年の検証により明示されていた。尚、波動を生気したのは1個ではない。20、否、30や40が一斉に咆哮した。さて......』
1つ、確認せねばならぬことがある。当然のことではあるが、確認せねばならない。聡明博識たる諸君が見据える先には何があるか?真理である。怜悧明哲たる諸君が思遣るのは何か?正義である。如何にも!諸君はその細微な律呂の違乱さえ逃さぬ眼を働かせ、昏い巌窟に隠匿されし什物を焼付ける耳介を解放する。そして、諸君が確証を内に込める時、打ち過ぐ外もまた確証なのだ。何故なら、諸君には当然のことだからである。
即ち、疑惑はこうである。aは無惨にも脳頂を隔絶し、その狂気はbの策する所であった。bは、aの色相の赤を纏う斧を振るい、その矢所を見事にも通貫した。bとは何か?諸君には自明の事実である。かの愚蒙が、廉潔たる語り手を代入するのを除き。
何と馬鹿なことか!よろしい、では述べよう。彼奴は証拠と称し、写真を突き立てる。諸君!諸君の高尚な視神経にそのような無駄を映すべきであろうか?否!否である!写真はその名を以てして、真を映すものではないのである。それは、仙才鬼才たる諸君にとっては至極自然なる事実であろう。甚くデータサイエンスという名の捏造に従服した社会であることを、諸君が憶えないことがあろうか?無論、否である。さて、かの痴れ者に下す天誅を如何に成すか?お伽噺で事足りるのである。諸君は金の斧を目にしたことがある。諸君は銀の斧を耳にしたことがある。これが何の灯を諸君に齎したか?偽善者の失墜である。血汐の眺望ではない。斧斤が薪を砕こうとも、体躯を断罪することがあろうか?諸君!正しく否である!では、如何にaは凶音に名を連ねたか?全く諸君の想起する通りである!この深層は、お伽噺にて画然たるのである!即ち......
口術 Onfreound @LieWound
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