怪ばかり
ふざけた狼人間
第1話
働き詰めで死ななくてよかった。さすがに名誉ある戦死で死にたいよ、あんなに戦ったのだから。けど、まさか恐山などという怖い山で死ぬとは思わなかった。
怨霊は物や人に憑りつかない限り、地獄へと徐々に吸い込まれていく。
なのだが、どうやら風のうわさを耳に入れ、春日河原に向かった崇徳上皇が青森を彷徨いちょうど未練を残して恐山に住んでいた怨霊と一緒に住み始めた。
そして、それをきっかけにあの山は霊山となり、様々な怨霊が憑りつくようになった。崇徳上皇は祀るところがあるものの恐山に入ってきた霊たちを一人ずつ祀ることは難しく、いよいよ近くの村々の人民を害すから全員退治してくれと何とも無理難題な命が来て、生死を掻い潜りながら戦ったが、やはり死んでしまった。
まぁ無事大体は祓えたし、偽物の私を大宰府に置いてきたし、安堵して死ねた。
今は2025年、
ちょうど1020年後。久しぶりに来てみたが、やはり霊の巣窟。全く怖い怖い、、。
「腕烈火-カイナレッカ、さぁ来い。お祓いの時間だ」
木陰から飛び出す無数の霊。両手に灯した炎を使い殴り掃ってどんどんと祓う。奥の方から現れる、眼が五つの異形の怨霊。
「おっと心中系は聞いてない..」
【ドンッドンッドンッドンッ】
くっ、何とも怖い。
「妖刀:真刀丸」
人差し指と中指だけを立て、第二関節で曲げる。そして、飛び出す半透明な剣。
【ドッドッドッ】
「剣技:戔斬-ゼンザン」
戔斬-一番早く一番攻撃箇所が少ない剣技。
切り落とした、上部の肉片がとろけるように下部に圧し掛かる。これが世界で一番気持ち悪い現象だと思う。
「うっ..ハァーハァー」
それからも、殴ったり切ったりしながら無事また恐山に溜まった霊を祓い終えた。夕暮れ前に終わって本当に良かった。帰りの電車では揺られながら景色を見た。
正直まだ信じていない。自分が”安倍晴明”であることを。
信じれないのではない、信じたくないのだ。
だって、私は幸せに生きたいからだ。
まず、私の敵となるものは自然に消える可能性がある霊ばかりじゃない、霊は敵のほんの一部、世界は怪ばかりなのだ。怪、妖、まやかし。延いては神までいる。
そんな怪も強さがある、そして、私が決める怪の強さの頂点こそ大妖怪。
命の危機を感じる者のくくりだ。そして、今平安から生きている大妖怪が何体か察知している。大妖怪一匹でも動き出せば日本など半月で終わるかもしれない。
それは妖術を持つからである。人も同じく持つことが出来る力。
妖術を使うのに必要となる妖力は簡単に言えば
「それはそうなる!そうなってくれ!」と思う力だ。そして、妖力の総量を増やす修行と技を磨いたり組み合わせる修行をすることによって妖術は大それた力となる。
前世の私だったら、関東を火の海にすることだって容易いことだった。
だが、今はその力を失っている。
それによって"大妖怪と対等に渡り合えない状況"である。
そして、私自身の力を失っただけならいいのだが、式神も行方を晦ました状況。
だから、今、とても..とても..この国、この世界は、大妖怪の掌の上だ。
だが、こんなこと只の妄想なら何のこともない。幸せにのほほんと生きれる。
だが、今祓った怨霊たちは?祓うのに使った妖術は?だから、もう嫌だ..!ァ..アァ..
散々だ...、、。そして、私がまた陰陽師のように戻りたくない理由がある。
十二体の手足となる式神がいてもいつもクマが目の下にあった。過労死、呪い死、敵に殺され死、死がいつもそこにあった。なのに、皆は僕を癒しも愛しも休ませもしなかった..。いや、けど、僕は..才があった、相応しい生い立ちがあった、努力家の師がいた。だから、陰陽師として生きるしかないと自分で義務感を背負っていた。
だが、今思ってもそれは正しかった。僕の代わりはいくら時が経とうとも出てこなかったからだ。あぁ、けど、嫌なんだ、実際百体ほどいるかもしれない大妖怪。
全く性質の違う一体一体。相性が酷く悪い奴もいるだろう。
そうなれば、終わりが見えない仕事..そんなものをォ永遠に続けられるほどォ寿命は有り余っていないィ!。
誤算がいけなかった。妖力とは、体中にある気というものに乗り体中に行き届く。
その気の感覚が全く違う、それは..身体が前世のものと別だから。
気が廻らず全く妖力を使えない、ということは妖力の出力が落ちる、ということは大それた妖術が使えないし、ただの妖術でさえ扱い難い。
あぁもう!!、そうだ、こんなことを考えても意味がない。今はまず呼んでも来ない十二天将を探しに行かなくてはいけないのだ。やっとまた天将達に会えかもしれないと考えれば楽しみで仕方が無いが、、天将達の身が不安でもある。だって、天将たちは俺が帰ってくると信じていたはずだ、、それなのに、向かいに来ないのだから。
〈カランコロン〉
「いらっしゃ..おかえり」
こちらを見つめる目、家は“今京都にある”。今世の母親は僕と二人で心中をしようしたらしい、それ以外は母親の事を知らない。父の事など何も知らない。僕は前世の記憶はあった。ただ現世と前世が混ざり合い、創造か現実かなど二歳半の僕にはわかなかった。最後に母親と一緒に食べた。盗んできたであろうレンチンでできる粥。それから、母親に抱えられ車に乗せられて崖に向かい着いたとたん母はすぐさま落ちた。僕は死ぬ事を受け入れなれなかった。
「妖翼展開-ヨウヨクテンカイ」
地面スレスレで妖術を今世において初めて使った。そして、生き残った。僕は必死に歩いて人の目に触れる場所まで行き、結果的に児童養護施設に預けられた。そして、18歳となった。京都の老舗の菓子屋を継いだ女性が里親となり迎えられた。そして、初めて15歳から貯めていたお金で自分のスマホなどを買った。この家でもご飯は食べるが、正直養ってもらう気はない。ただ無料の宿と住所の常識が欲しいだけだ。
部屋に入り、窓を見つめ空が変わっていくのをただ見ていると電話の音が鳴る。
〈ガチャ〉
-おーい、元気してる?赤松ぅーー-
あぁこいつか...。
「はいはい、何だ?どうした?」
-そっちは養護施設出て上手くやってる?-
「おぉ人麻呂の方は?」
-歌手活動がめちゃくちゃ上手くいってて順調に名前が有名になって行ってるよ-
「ならよかった」
-ちゃんと俺の曲聞いてるかァー?-
「もちろんだよ」
-まぁいいや、何か豆知識覚えた?-
「こんばんわをんじゃなくてこんばんはひふだぜ」
-そんぐらい知ってるわ!-
「人麻呂にしては珍しい」
-あっそれで本題言っていい?-
「おぉ、どうしたんだ?」
-WASEちゃんが友達って話したんじゃん-
「あぁあの色々な番組に出てる、お前と同じ超売れっ子シンガーソングライター?だろ?」
-そうそう、超超売れっ子なんだけど、同じ事務所で最近MV撮っているスタジオも同じなんだけど、そんな彼女がその・・スタジオがおかしいって言ってるんだよね-
「えっ..あぁ」
-意外と一等地のビルなんだけど、やたら百足を見るから何か怖いって言ってて-
「うん..」
-お祓いできるって自慢してたよな?-
「いやっ..そうだっけ、、へへ、、」
-じゃあ×××-×××来てな?-
「えっ?けど、本当に僕来ちゃっていいの?」
-二万でいい?-
「いや、、ちょいちょい待て、待ってくれ」
-いいだろ、お前めちゃくちゃ頭がいいし大丈夫だって-
「そういう問題なの?」
-頼む、頼むよ赤松ぅー-
「、、、いいよ。けど、この一回限りな」
-よかったァー!-
「けど、お前なら自力で祓えると少し思うけどね」
-マジ?大声で曲歌えばいいかな?-
「いやそうじゃないけど、じゃあ明日でいいか?」
-うん、全然いいよ。けど、朝一に来てね?-
「はいはい、あっそんだけするってことは人麻呂WASEの事..」
-そんじゃ-
〈ガチャ..プープープー〉
「切られた...」
少し前に入っていた養護施設時代の友達「人麻呂」だ。
人麻呂はいい奴だ。だから、頼ってきたら遂言うことを聞いてしまう。まぁ、当然か。だって、あいつには助けられてきたからな。まっ今回分でもしかしたらチャラだけど。フフッ。友達と話していたら少し気分が良くなった..。
明日の予定は変更と。
「ほんとうに、、、何処にいるんだ天将..」
怪-彼によって大きく変わり始める世界。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます