転職は死にゲーだ。

北見慎吾

第1話

・序章:無職三カ月、経歴ボロボロ

 私は今、仕事をクビになり人生のどん底に居る。

無職になり、早くも三カ月が経とうとしている。

ただの無職なら、どんなに救われるだろう・・・・・・

だが私は転職に三回失敗し、経歴がボロボロである。


 最初の転職では、教育しないという高度な嫌がらせを受けた。

次の転職では、上司に無理な業務をなすりつけられ精神を病み退職

次の転職では、死体蹴りのごとく毎日恫喝されたあげく一カ月で解雇

ちなみにどれも「未経験OK」の求人である。

未経験OKとは?O(おい)K(殺すぞ)の略かな?

会社怖い、面接で言っていることと、実際にやっていることが全然違う。

こんな予測できないものは「死にゲー(何度も死にながら攻略していくゲーム)」である。


 「DARK SOULS (ダークソウル)」という死にゲーには、「心折れた戦士」が登場する。

後ろ向きな発言ばかりするが、プレイヤーに攻略上のヒントなどをさりげなく教えてくれるキャラクターだ。

私も心折れた戦士らしく、これから冒険(転職)に出る皆さんにヒントを送りたいと思う。


 皆さんは、こう考えてはいないだろうか?


「入社して、すぐ退職してしまうと経歴に傷がつく、できれば面接の段階で見極めたい」


 結果から言うと、面接で見破ることは可能である。

ただし、それを知っていても採用を貰えば、入社をしてしまう人は多いだろう。


 考えて見てほしい、転職したいということは現職で、少なくとも何らかの不満を持っており、精神的に不安定な状態ということだ。

そんな中で求人を探し、自己PRと志望動機を考えて、履歴書・職務経歴書を作り、書類審査に通ったら、面接の練習をして本番をむかえるのだ。

これだけでも多大な労力がかかり、二次面接やSPI審査などの適性検査がある場合は、さらに労力がかかる。

その苦労の末に採用をもらえば、喜び勇んで入社してしまうのは当然のことである。


 この現象は「死にゲー」初心者にもみられる。

攻略法を考えて苦労をしながら進め、苦労の末に難局を脱すると喜び勇んで不用意に進み、罠にかかり死んでしまう。

では上級者は、どうしているのだろうか?

それはーー


「最後まで罠があると想定しながら警戒心をマックスにして進むのである」


決して気を抜かない、見るからに怪しい壁を片っ端から叩きながら進む。


 実はこの方法がヤバい会社を面接で見破る方法である。

面接官を片っ端から叩けと言っているわけではないので、落ち着いて聞いてほしい。

ポイントは三つだ。


・2章:ヤバい会社を見抜く三つのポイント

・一つ目 面接前に会社から出てきた社員に挨拶をしよう


 面接官や社長・幹部と話をするだけでは、その会社は分からない。

彼らの仕事は、良い人材を確保することである、面接時に本性を見せることは確実にない。

これが罠である。


それでは、どうするか?


 外に出てきた会社の社員を見つけたら、大きな声で挨拶をしてほしい。


 会釈や挨拶が返ってこなければ、その会社の本性を物語っている。


 会社内の人間は事前に、今日は面接だからと通知がきていて、アットホームの仮面を装備している。

しかし、外に出た会社の社員は気を抜いてアットホームの仮面を装備し忘れている。


 外に出た会社員の仕事は、良い人材を確保することではなく、売上げをあげる事である。

そして、彼らは取引先には、確実に挨拶をする。

なぜなら、「売り上げをあげてくれる役に立つ人間」だからだ。

つまり、「売り上げをあげない人間は人間と思っていない行動」をとっている、これは仕事の癖である、周りの人間もしているので違和感もない。

それが本当の、その会社の社風だ。


 新人とは、初めは売り上げをあげることが出来ない。

むしろ会社の人件費を食いつぶす存在である。(実際には未来に投資しているわけだが)

会社の先輩が、そんな新人を人間として扱ってくれるでしょうか?


・二つ目 逆質問で「新人の教育計画の有無」を聞く


 面接の最後には、逆質問の時間が設けられる、設けられない場合はヤバい会社だからやめておいた方がいいだろう。

「新人の教育計画が無い→基準が無い→教育者の言っていることが毎回違う→教る時間が無くなり忙くなる→教える時間が無いのに教えるから新人が間違えると恫喝してしまう」このような負の新人教育スパイラルが起こる可能性が高い、雰囲気が良くてもやめておいた方がいいだろう。

人とはモンスターのごとく豹変するものである。


三つ目 採用通知が異常に早い

 私が転職を失敗したすべてに共通するのが、一日二日で採用通知が来ているところだ。

中小企業に多く見られ、大企業ではありえない。

考えてみてほしい、面接が終わり、面接官と社長や幹部で吟味をして話し合う。

「彼は、この会社に馴染めるだろうか」

「働き続ける要因」

「辞める要因」

全てを考える考える考える、そうすると必然的に一日二日では結論は出ないのである。


 それでは、一日で採用通知が来ているとは、どういうことだろうか?

それはーー


「考えていない」


 この一言に尽きるだろう。

何も考えていないから、ミスマッチが高い可能性で発生する。

その結果、転職者の経歴に傷がつく。

しかし、企業側には傷はつかない。

そのため、平気でこのようなことをする。


採用されてクリアだと思ったら、落とし穴に落ちるのである。


・最終章:「心折れた戦士」の末路

 最後は「心折れた戦士」について語り結びとします。

彼は、最初に話しかけると、こんな風に言います。


「あんたも不死人か。……まぁ、どうせみんなそうだ。結局はみんな、発狂して終わるんだ。」


DARK SOULS

このように、世界や自分の運命をすでに諦めており、どこか達観したような態度を取ります。

しかしそれは、「もう何度も挑んで、何度も絶望してきた」結果なんです。


彼も元は、プレイヤーと同じように「選ばれし不死人」として旅を始めた人物。

けれど、幾度の敗北と死を重ね、世界の理不尽さに飲まれ、最終的には心が折れてしまったのです。


つまり彼は、


「何度も死んで学ぶ」

というこのゲームのテーマに耐えられず、途中で折れてしまったプレイヤーの“もうひとつの姿”

とも言えます。


『ダークソウル』では、プレイヤーも何度も死に、絶望しながら進みます。

その過程で、「もう無理かもしれない」と思う瞬間が誰にでもあります。


そんなとき、祭祀場にいる心折れた戦士が言う一言が、まるで自分への皮肉のように響くのです。


「結局みんな諦めるんだよ。お前もそのうち、分かるさ。」


DARK SOULS

彼は「もしプレイヤーが諦めたら、こうなる」という未来の自分の姿でもあります。

逆に言えば、彼を乗り越えることが、このゲームの第一の試練なのです。


ゲームを進めると、彼はだんだんと姿を見せなくなります。

そして――後に別の場所で、「亡者」と化した彼と再会します。

理性を失い、敵として襲いかかってくるのです。


プレイヤーが成長し、前に進んだその先で、

「進むことを諦めた者の末路」が彼の姿として描かれているわけです。


これを読んでいる人が、そうならないことを祈っています。

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転職は死にゲーだ。 北見慎吾 @Takezawa0001

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