本能的に忠実な人生

超町長

第1話

「イ、イクわ...!」

「ふぅ...。」

俺はすぐさま基本の構えをとり周囲を警戒する。静寂に包まれた室内。

「その急に切り替えるのやめてっていつも言ってるでしょ」

「そうは言っても賢者タイムってそういうものなんだ。敵の攻撃に備えないと」

「ここはホテルなのよ。敵なんているわけないじゃない」

「常識的に考えたらそうなんだけど...」

「後ろ...!」

その時だった。背中に鈍い痛みが走る。俺は背中を何者かに刺されたことに気が付き、背後に手を伸ばす。敵の腕を掴み、投げて抑える。誰だこの男は。

「救急車お願いします!」

「ありがとう。うっ...一体どうなってる」

部屋にあったローブで止血を試みる。敵はベッドの下に潜んでいたようだ。いつものように賢者タイムが始まってすぐに基本の構えをとった。しかし、心のどこかに油断があったのかもしれない。どうせ今日も何もないと。知らず知らずのうちに基本の構えは形だけのものになっていた。


 次の日、病室で目を覚ますと、犯人は逮捕されたらしく事件のニュースが病室のテレビで流れている。

「X容疑者は『羨ましかった』などと供述しており...」

犯人の行動もまた本能によるもの。本能と本能のぶつかり合い。生物として生まれたものの運命だ。


 しばらくして退院が決まった。

「ひどくなくて良かったわ」

「君がすぐに救急車を呼んでくれたおかげだよ」

「あなたがすぐに犯人を抑えることができたからよ」

久しぶりに帰宅し、部屋の中を確認する。机の上やタンスの中などが入院前とあまり変わらないことに安堵を覚える。晩飯をすませ短い散歩をした後、俺たちはホテルに向かう。部屋に到着し、ベッドの下や冷蔵庫の中も確認する。我々は生存本能を満たすためのより確実な方法を選択することができるのだ。

「イ、イクわ」

「ふぅ...。」

基本の構えをとった。

「だからそれやめてって言ってるでしょ」

「本能には逆らえない」

「賢者タイムはあっても構えないことはできるでしょ?」

「理屈の上ではね」

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本能的に忠実な人生 超町長 @muravillage

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