【情愛】
しばらくの間
あの人を頼む。
「香澄」…
姉さんと里長よりの言伝
ああ…よかった…。
感情をまた出さずに済んだ。
歓喜の感情を
恐ろしく浅ましい
私自身の醜い感情を
私なら不安はないと
信頼を寄せる二人を他所に
仮初ながら
一時ながら
あの人と暮らせるのだと
如何ともし難い
何物にも代えがたい
この高鳴りは
私だけのもの…
誰にも見せられない
私だけのものなのだ。
「わかりました。お任せ下さい」
一瞥し
何の捻りもない返し
それでいい
私はそれでいい
今はそれでいい
あの日から
もう抑えてはいられない
確かめねば
確かめねば
あの日掴めなかった背中に
あの日霞んだ背中に
次こそは
今こそは
確かめねばならない
高鳴る胸を堪え
浅ましい感情を隠し
今宵私は
あの人を確かめるのだ。
薪が弾ける音が響く。
パチパチと
乾いた音が響く。
その中に混ざる
仄かな吐息と
甘い水音
「あっ…はぁ…っ」
声にならない
声を出せない
ただただ感じるままに
ただただ貪るような
久方ぶりの情事は
互いを求め狂う
獣の如き交じり合い
何度も何度も
何度も何度も
夢見た瞬間
ああ…なんとも…
ああ…どうして…
こんなにも満たされるのか。
言葉は無かった
抑えられなかった
浅ましい女
卑しき女
そう思われても仕方ない
向きを変え
場所を変え
ただただ甘く深く
肢体が喜び震え
「桔梗」という身体を
「桔梗」という心を
満たしていく。
胎内で響く脈
それすら全て愛おしく
終わることの無い快楽に
身を任せ
破滅へと向かうように
深く深く
溺れていくだけだった。
誰にも見せない
見せるはずがない
あの人以外には
あの人だけにしか
こんな淫らな自分など
見せるはずがない。
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