これだけの分量でありながら、「死の14日前から遡る構成」という軸がぶれないのが何より驚きでした。神経毒を打たれ視界が狭くなっていくプロローグの一行から、読者はすでに夢士と運命を共にしている。この掴みの力がなければ308話を読み続けることはできなかったと思います。
本作の最大の強みは、夢悪神という「呪い」を主人公が拒絶し続ける点にあります。能力を持つ者が無双する物語ではなく、望まない力に翻弄され、それでも自分であろうとする男の話。耀優との友情、獏々への記憶夢、そして紫紺との因縁——Emotional Storyで積み上げられたすべての感情が、本編の14日間に収束してくる構成の緻密さは、シリーズ全体を通して読んだ者にしか分からない重さがあります。
芸能界という虚実入り混じる世界を舞台に選んだことも巧みでした。夢の中でしか本音が出せない夢士と、カメラの前でしか輝けないスターという二重性が、作品のテーマと完全に重なっています。完結済みなので今こそ一気読みをおすすめしたい、「新橋夢士」シリーズの本流です。
他人の夢に入り込み、影響を与えることが出来る能力を持つ主人公、夢士が、
その能力に翻弄されながら、もがく14日間を描いた物語です。
特別な能力を持つ主人公……、となるとその能力を使い、無双する。
人助けする。世界を変えるなど。
基本的には主人公にとってプラスになる要素だと思います。
ただ、この話の能力は主人公にとっての枷、もしくは物語上超えないといけない「壁」として存在します。
望まない能力に最初は翻弄されていた夢士がどのように
自分の進むべき方向と能力に向き合っていくのか。それがこの物語の核になっています。
また、この話の一番面白い所は主人公と同じ能力を持っている人が、
他にもいるということだと思ってます。
同じ能力を持つ人が複数いることで、
主人公だけでなく、彼らがどんな選択をして、どうかかわっていくのか。
是非14日間の物語を見守ってください。
夢を題材に扱う物語は、一筋縄ではいかない奥行きと深い静けさに満ちている。
そんな印象を受けながら読み進めていました。
「なるほど、こういう夢の扱い方もあるのか」という新鮮な発見もあれば、主人公の心に歩み寄ることで感じる切実さもありました。
現実世界と夢の記述が交錯することで独特の世界観の立ち上げに成功しており、丁寧な筆致で読みやすい文章と細やかな心理描写で、どんどん物語の中に引き込まれました。
作者の方による絶妙な仕掛けが後ほど効いてくる展開もまた、物語の求心力になってます。
あらためて「夢とはなんだろう」とふと考えたくなる、そんな示唆も含んだ深みのある作品でオススメです!