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「う、うわあああーーーー!!!!」
物凄い叫び声をあげたのは俺ではなく──ただの青年だ。
「なんだ、びっくりさせないでくれ」
「出たあぁーーー!!!あ……!?あれ?あ、幽霊って喋れるんですか!?」
「いや顔色は悪いが俺はれっきとした生きた人間だ」
「あー!あ、なんだ!!てっきり噂の幽霊か何かかと……!」
青年が被っているフードはびしょ濡れで、床もじんわりと湿っていた。
「おまえも雨宿りしてたのか?」
「そうです!あ!雨というか、雷を避けてたんですけどね!」
「まあ雷に打たれたら死ぬ場合もあるもんな。統計では30パーセントの確率で死ぬらしいが……」
「いやそれが、僕は確実に死ぬんです!」
「えっ?」
「僕、電気を通しやすい体質みたいで〜」
まさかの同じ体質の奴とめぐり会ったことで、俺の警戒心は一気に緩んだ。
「……俺もそんな感じだ」
「え?まさかのあなたも!?」
「奇遇だな」
「昔魔法学校の先生に、雷に打たれたら確実に死ぬって言われました!!」
「おお、それ俺も言われたぞ」
俺は初対面にも関わらず、青年に対して一気に親近感が芽生えた。
「あれですよね、人と手が触れただけでバチッといいますよね!」
「おお、わかるわかる。これじゃ恋人と手を繋ぐこともできない」
「わかります〜!!」
「まあ彼女できたことないがな」
同じ体質の人間と初めて会った俺たちは古城の廊下に腰をおろし、雷の唸るような音にも負けず数時間ほど語りつくした。
外はようやく静けさが戻り、俺たちは入口へと向かった。
「あ!気づいたら雨上がりましたね!」
「おお、雷も大丈夫そうだな」
「あ、さっきの体質の話は内緒にしてくださいね!僕ただでさえ弱そうなのに人に弱点知られたら終わりなので〜」
「ああ、俺も立場上困る。お互い内密にしよう」
雨上がりの外へ出てお互い握手をした。追い風で青年の被っていたフードがパサっと取れる。青年の頭からツノが見えた。
「あれっ?おまえ、ツノ……?」
「あ、……あー!僕生まれつき生えてるんですよね!!これも体質で」
「へ、へえー」
今度は向かい風によって俺のマントがゆらゆらとなびき、携えていた剣がキラッと光る。
「あれ?その剣ずいぶん立派な剣ですね……?」
お互いの間に不穏な空気が漂う。
「あ、ああ、えーと、俺は武器屋なんだ」
「へえええ……」
「……」
「……あっ!そろそろ行きますね!それでは!」
「お、おう。じゃあな」
俺と青年は雨上がりの空気にふさわしい爽やかな雰囲気を取り繕って、平和に別れた。
──数ヶ月後、魔王城にて。
俺が魔王のいる部屋へ進むと、魔王が──あの時の青年が笑みを浮かべて立っていた。
「うわー!やっぱりあなた勇者だったんですね!」
「おまえも魔王だったか……やはりな」
「弱点教えちゃったー!あ、でもそれはあなたも同じかっ!」
「ひとついいか?雷魔法はお互いにチートすぎるからナシにしよう」
「あっそれ名案ですね!そうしましょう!」
「それじゃ……」
俺は剣、
「いきます!!」
魔王は鎌を構えた。
俺も魔王も瞬時に踏み込み距離を詰める。
そしてお互いに同タイミングで魔法を放った。
「「”サンダーボルト”っっっっ!!!!」」
─完─
雷に打たれたら100%死亡する勇者の俺、雨宿りした先は”何かがいる”と噂の古城だったのでどこにいても詰みな模様。 新都 蘭々 @neet_ranran
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