第二十節

ダーク「浪止様は言いましたよね?『私はとても物知りだ。物知りだがゆえに言ってはいけないこともある。私が何者なのかは今話すのには早い。でも最期には話すから安心しろ』と。今が最期ならそれを話すべきじゃないんですか?」

浪止「やはり、気がついたか。知というのは毒りんごのようなものだ。一度食べれば無知には戻れない。その毒がその者に何をもたらすかもわからない。破滅か、はたまた幸福か……。それでも、知りたいか?」

ダークは少し怖気づく。

ライト「超能人は長生きします。いつまでも真相に悩まされるのはたまったもんじゃないですよ」

浪止「そうか。話そう。私の名はジナミトメ・モノ。称号名は時波留神頻波羅じなみとめしんびんばら。正真正銘の神様だ」

2人は息を吞む。

浪止「私が帰るべき場所こそ、ホコリとアベボンが待つ天界。私は時間を司る神だ。だから未来のことが手に取るようにわかる。そして、ホコリとアベボンは私の親戚みたいな位置にあたる。神様はものをつくるのが仕事だ」

ダーク「何のためにここへいらっしゃったのですか?」

浪止「それに答えるにはホコリの話を通らずにはいられない。ホコリがつくったものは超能人だ。人間になりたい、人間に近づきたいというホコリの願いによって生み出された概念、それが超能人。ホコリは一度、失敗している。超能人という骨組みはできたのに、神らしさが感じれず、ただ神様の特徴を模倣しただけの生き物というか機械に等しいものをつくってしまった。そこで天使に処理をするように頼んだ。天使は私たちの部下のことだ。存在する概念の意味を無くす、無効化することを仕事としている。そして人間たちは超能人を恨み、絶滅の寸前まで追いやった。」

浪止は悲しそうな顔をした。

浪止「だが、ホコリは諦めなかった。神様の魂を超能人に分け与えることで、神らしさを持つ超能人をつくろうとした。だが、それには誰から魂をもらったかを明確にする必要があった。そして生まれたのが継承という概念だ。こうして超能人のつくりかたともうひとつ、神が地上へ降りるルールがつくられた。身体を持つこと、殺生をしないこと、正体を明かさないことの3つだ。」

ダーク「え?」

浪止「そうだ。今さっきルールを破った。話を続ける。そして、ホコリの魂を受け継いだのがダーク、そしてアベボンの魂を受け継いだのがライトだ。そして重要な仕組みとして継承は超能人から超能人にしかすることができない。つまり、私は君たちを弟子にすることができない。そして、私が地上に降りてきた理由はホコリの遺産を守るためだ」

ダーク「浪止様はどうなるのですか?」

浪止「天界に戻ったら罰を受けるだろう。鳥か虫か、はたまた龍か何かに姿を変えさせられるかもしれぬ」

ライト「待ってくださいよ。そのアベボンってどんな神様なんですか?教えてくださいよ」

浪止「非常に奇抜なやつだ。生まれてすぐに雷をつくった。だから彼の名前はアベボン・サンダー。神としての才能がすごいやつだ」

浪止は虚空から剣を取り出す。

浪止「この剣は神剣しんけんといって神の証みたいなものだ。この剣には位がある。そして私は頻波羅びんばらという位にあたる。だが、アベボンはその上の矜羯羅こんがらという位だ。それだけではない。ピーニャパウダー星という惑星をつくり、そして、伝説の剣までもつくった」

ライト「え?」

浪止「なんと親バカなことか、その剣は神剣を分析してつくったとアベボンが言っている。私はもうその辺の仕組みはさっぱりわからないがな。まぁ、雷に紛れ込ませて伝説の剣を落とし、そして、そもそもライトしか抜けないようにする。ここまでくればただの必然だ」

浪止は肩の荷が降りたような清々しい顔をしていた。

浪止「言ってしまえば神様はよほどのことがないと死なない。ホコリも普通に生きている。ただ、君たちに会う手段がなくなっただけのこと。私たちはいつでも天から見守っている。では達者でな、サンシャイン・ライトニング・サンダー、そしてダーク・ワルト」


ダークはペンを置いた。

ダーク「あれからいくつ、時が経っただろうか。超能技術部、これを浪止様が残してくださったインサツキとやらで複製してくれ。浪止伝説も書き終えたことだ。全部で二十節か。次は何をしようか」

ダークは窓の外で鳥が羽ばたくのを眺めていた。

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浪止伝説 こんがらと大未亜 @kongaratoomia

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