第十九節
あれからまた時が経ち、人間たちの争いは本格的となった。浪止が指導する超能技術部はまた画期的なものを発明したらしい。
「そろそろか」
浪止がつぶやく。誰かが走ってくる音がする。
ライト「浪止様、今日も稽古終わりました」
浪止「結果はどうだった?」
ライト「もちろん僕の圧勝ですよ」
後ろから追いかけてくる足音とともにダークがくる。
ダーク「ライト、今日は一撃入れただろ」
ライト「そんなんじゃ、引き分けにもならないよーだ」
浪止「ダークも成長しているようで何よりだ」
ライト「浪止様、弟子にしてくださいよ。そうすれば、僕の力に加え、浪止様の知力も合わさり最強になれるではありませんか」
ダーク「ライト、抜け駆けするな、私も浪止様の弟子になりたい。私のほうがその知力を背負うのにふさわしい」
2人はそう言ってにらみ合う。
浪止「君たちが言う弟子は継承のことだな?」
2人はもちろんと言うようにうなずく。
浪止「ダークには前にも話したな、人間と超能人のおとぎ話を。」
ダーク「はい、よく覚えています。そのとき、私はまだ子どもだと浪止様はおっしゃっていました。でも、今の私なら……」
ライト「僕だって……」
ライトがダークの話に割り込む。
ライト「僕だってもう子どもじゃないもん」
ダーク「ライト、話をさえぎるな。大人の余裕ってのがないのか?」
ライト「なにぃ?ダークこそ、偉そうに。剣術はまだまだじゃないか」
ダーク「私は剣術だけでなくてだな……」
2人は今にもケンカしそうな勢いだった。それを見かねた浪止が口を開く。
浪止「大人というのは身体が大きいだけの子どもだよ。みな、大人のふりして生きているんだ。子どもっぽくあろうとなかろうと関係ない。嫌でも大人になる」
ライト「嫌なんかじゃないですよ」
浪止「残念なこと言うが、君たちは私の弟子にはなれない」
ダーク「何がいけないのでしょうか、足りなければ努力します」
浪止「そうか。そうだな……最期の授業をしよう」
浪止「私はそろそろ故郷へ帰る。ホコリにもアベボンにも久しぶりに会いたい」
ライト「僕も連れてってくださいよ」
浪止「それはできない」
ダーク「ホコリ師匠?なぜその名がこの流れで出てくるのです?死ぬおつもりで?」
ライト「?!死なせるもんか」
浪止「私は死ぬわけではない。だが、ここを離れる前に言葉を贈ろう」
浪止「ライト、量より質だ。その才能を磨け。1%の才能があろうとも99%の努力がなければ才能は無に帰すことを心得ること」
浪止「ダーク、質より量だ。その数による努力を続けよ。99%の努力があろうとも1%の才能がなければ努力は無に帰すことを心得ること」
浪止「2人は対照的であるが、同じ超能人。そして互いに補い合える。自分にない努力を頼りにし、また、自分にない才能を頼れ」
浪止がその場をあとにしようと歩きはじめる。ダークは何か違和感を感じていた。ダークがライトのほうを向いたとき、ライトもまたダークのほうを向いていた。ライトは素直な表情をしていた。ダークはたまらずに声をあげた。
ダーク「浪止様!!」
浪止は少し驚き、妙にびくびくしている。
ダーク「浪止様、何かおかしいですよ。何か隠してますね?」
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