第十七節

浪止一行は本城に着く。

先ほどと打って変わって、浪止は将軍から信頼を受けている人という立場であることを実感する。特別に用意された席へ案内され、ライトとダークはSP(要人警護人)かのように張り付いていく。超能人を不思議そうに見る人間たち、浪止の顔をひと目でもうかがいたいという視線。そしてやはり緊張しているのはダークぐらいだった。

「すごい人の数だ……」

そして式は順調に進んでいく。その間、たまにダークの顔を見る浪止に違和感を抱きながらもダークは守護剣士として務めていた。

そして、ダークはなにかを察知した。そのときのダークの動きはとても素早かった。

浪止に覆い被さるような行動を取り、死の力を発動した。ダークの身体にどこからともなく、弾丸が突き刺さった。

それを機にライトが臨戦態勢となる。

そして2発目にすぐ反応。ライトは伝説の剣で弾丸をいとも容易く木っ端微塵にした。

3発目が来る。ライトは今度も木っ端微塵にしようとした。すかさず、ダークは鏡を力を伝説の剣にかける。そして叫ぶ。「ライト、頭を使え」

ライトは3発目の弾丸を跳ね返し、発砲者にかするように当てた。

人間たちも穏やかではなかった。急な銃器の鋭い音。浪止はライトとダークに守られながらその場をあとにした。


ライトはあわあわしていた。ライトは浪止からまた𠮟りを受けるとおびえていた。

だが、浪止の口から出た言葉はライトの予想と違った。

「ライト、ダークの治療を手伝ってくれ」

「はい、浪止様」

ライトは思ったよりも自分の声が出ていて自分で驚いた。浪止はダークにしゃべりかける。

「ダーク、無茶したようだね。剣を使わなかったのか。非常に正しい選択だと思うよ。自分の実力をしっかり把握して、それでいて自分に何ができるかをしっかり考えられているね。まぁライトのように銃弾を刻むのは真似しようとしてもなかなかできることではないけどね」

そして浪止はライトのほうを向く。

「ライト、よく発砲者を気にかけながら反撃できたね。ダークの合図もしっかりと受け取れたようだね」

そして浪止はダークの傷あとに向きなおる。

「今回、何があったのか自分で考えてほしいところだけど、あまりにも複雑だから私が説明してあげよう。どうやら将軍のあとつぎ問題が生じているそうでね。将軍自身何年も生きるつもりでいたそうだからあとつぎのことなんて考えていなかったそうな。そんな中残されたのはせっかく上の立ち場になったのに平等とか言って自分の役職を降りたくなかった将軍の側近たち。いわゆる保守派さ。彼らがそこで目を付けたのが超能技術部さ。今回の犯行で使われたのは、我が超能技術部が考案した長距離用銃さ。前から銃の性能には問題視していたからね。ちょうど提出した試作品が使われたみたいだね」

「浪止様、なぜそのことをお伝えに……」

「ダーク、傷口が開くぞ。君たちは稽古を頑張っていただろう?余計な心配をかけなくとも君たちなら絶対大丈夫だと信じていたのさ」

「浪止様、なんでそんな危ないもの作ったの?」

「ライト、良い質問だね。技術革新ってのは幸せをもたらすのさ。ただ、それと同じ量の不幸も連れてくる。私たちが作らなかったとしてもいつかは誰かが幸せを求めて作る。そのときに、遅れをとればもっと不幸になる。ただそういうわけさ」

ライトは「そういうもんなのか」という顔をする。

「ちなみに4発目が来ていたら、それはクラスター銃弾だったね。まぁ、何にせよ、保守派は超能人を攻撃する大義名分がほしいようだね。それで致し方なく暗殺という形を。人権宣言の象徴となっている超能人を排除したいのかな」

クラスター銃弾。あらかじめ破裂するように作られていた銃弾。剣で木っ端微塵にしていれば、周り人もろとも怪我をしていた。ダークはそれを悟ったのか、出血したからなのか寒気がした。

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