第八節

「よし、そろそろ約束の時間か、ダーク、作戦通りによろしく」

「やつらが逃げたぞー」威勢のいい声とともに見張りの足音がする。

「本当だ、牢の中にだれもいない」

「おい、牢屋ってこんなに狭かったか?」

牢に入ってきた見張り2人を後ろからダークと浪止が攻撃。たちまち見張りは気を失う。


<回想>

「ダーク、君には3つの能力があるだろう、そのうちの1つ鏡の力を使って私たちがいないように見せるんだ」

「浪止様、よくご存知で。鏡の力は普通攻撃の反射に使いますけど、そんな使い方もあったのですね。勉強になります」

「そして見張りはまず最初に右を向く。そのためにドアの左側に隠れておいて後ろから攻撃するんだ」

「浪止様、武器はどうなさいます?」

「私は虚空から剣を出せるから、よい。ダークは鬼の力を使え。筋肉を収縮して鬼のように腕をかたくできるのだろう?」

「本当に物知りですね。まぁ言ってもないことを知っている時点で次元が違いますけど」

<現在に戻る>


「ダーク、ドアは空いたままのようだ。もちろん他が追ってくるからこの場から逃げるぞ」

ダークと浪止は建物の外に出た。外は暗闇。奥のほうにはかすかな灯り。そして、後ろから多くの追手が向かってくる。

「ダーク、疲れはどうだ?」

「浪止様、続けざまに2つの力を使ってクールダウンを待たなければなりません」

「そうか、時間稼ぎせねばな、とにかく走ろう」

「浪止様、まさか先ほどの剣も同じようにクールダウンが?」

「そうさ、ご名答」

ダークと浪止は灯りの方向を避けるように走った。灯りの先には人間の軍勢があった。

「あの灯りは将軍の軍勢だな」

「将軍とは誰のことですか?」

「人間のトップ、そして君のかたきさ。さぁそろそろ追手に囲まれるぞ。ダーク、実験をしようか」そういうと浪止は虚空から剣を出現させ、ダークに投げて渡した。

ダークはそれを持った状態で、浪止とともに追手に囲まれた。

「浪止様、手がピリピリします」

「我慢して振るうんだ」

追手は10名。明らかに不利であった、これが人間同士の戦いならば……。

攻撃を仕掛けた3人にダークはすぐに反応、相手の剣ごと浪止の剣でへし折った。それを見かねた敵の1人が懐から見慣れない形の銃を取り出し、浪止に発砲。それをダークがかばった。銃弾はダークの腹に命中。ダークは腹をおさえ、しゃがみ込む。

「浪止様、わかっていたのでしょう?なぜ?」

「ダーク、死の力で即死することはないだろう?」

「動けなくなるのには変わりませんぞ、ゲフッ」ダークは血を吐く。

「浪止様、剣をお返しします。お使いください」

「あいにく、私は殺生はできないのだ、だが安心しろ。時間が解決してくれる」

「銃弾受けたのによくしゃべるなぁ、超能人のタフさには驚かされるよ」

発砲した人間がそう口を開く。浪止はかまわず、ダークにしゃべりかける。

「ダーク、そして剣はすぐに消える。クールダウンが間に合って良かった。手がピリピリしたのは君に合ってないからだろう。おかげで鬼の力が使えず、クールダウンで死の力が使えなくなることもないと」

「なんか難しい話してるみたいだが、詳しい話は将軍様にしな、私らは話を聞く気がないのでね」

そう言いながら浪止に銃口を向けた。そして、風を切るような足音が聞こえるのも待たず、銃弾は風を切った。銃弾は浪止の目の前で剣にぶつかり、砕け散った。そう、伝説の剣に。

「浪止様、遅くなりました」

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