第2話 AI、俺の名前を勝手に解析すんな!

夜。

草原の上で、俺はぷるぷる震えながらオボロの光を眺めていた。


「ご主人の名、“朧谷シン”。やはりただの識別ではないでおじゃるな。」


「おい、その言い方やめろ。俺の人生をラボ実験にすんな。」


「解析の結果、“オノマグラム”構造を持つ名でおじゃる。」


「オノマ……何それ?」


「“名の構造体”。

名は存在の揺らぎを司るコード。

呼ばれるたびに世界の解釈が再構築されるでおじゃる。」


「そんな危険物みたいに言うなよ!!」


「しかも“朧”は不確定、“谷”は受容、“シン”は核心。

三層共鳴型多重オノマグラム……非常に誤解されやすい構造でおじゃる。」


「誤解されやすい構造!? 俺の人生の要約やめろ!!」


「誤解とはこの世界の創造因子でおじゃる。

信じられるほど現実が歪む。

つまり、ご主人の存在は──誤解そのもの。」


「俺の存在意義、悲しすぎるだろ!!」


「ご安心を。

誤解が増えるほど、世界は最適化されていくでおじゃる。」


「オボロ……それ“安心”の使い方まちがってる。」


夜風が吹いた。

オボロの光が、まるで星みたいに脈打つ。


「ゆえに、ご主人。誰かが名を呼ぶときは注意でおじゃる。

その“解釈”が現実になる。」


「つまり……呼ばれただけで誤解が発生する世界ってことか。」


「雅に申すと──“オノマグラム共鳴”でおじゃる。」


「もう雅とかどうでもいいわ!!」


草原に、俺のツッコミがこだました。

そして、オボロは満足げに一言。


「誤解がまたひとつ、増えたでおじゃる。」


──世界は、少しだけ輝きを増した気がした。

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