4.ボルク氏が降参した後、俺は、馬車の中に居る、少女を猿轡と縄を解いてやった。

「けほっ、けほっ・・・有難うございます・・・。助かりました」


金髪の少女は俺に感謝した。


よく見れば、耳が尖がってる。


「もしかして、君、エルフって奴かい?」


そう聞いてみると、彼女は複雑そうな顔をして


「えっと・・・半分は人間です・・・エルフと人間のハーフです・・・」


そう、もじもじ言った。


「お兄さん、そいつは、珍しい人間とエルフのハーフなんですよ。お兄さんと同じく、この草原をうろついていた所を捕まえました。珍しいので、高く売れると思いますよ」


ボルク氏が補足してくれた。


「そうなんだ。・・・じゃあ、君を解放するよ。こんな怖いおじさん達に捕まって怖かったでしょう?」


俺は、優しく言ってあげた。


「か・・・解放・・・?・・・・・・それはとても嬉しいです・・・ですけど・・・ここで解放されても、野垂れ死にますし・・・その・・・街まで、送っていただけると嬉しいのですが・・・」


エルフ人間はそう言った。


「そうなんだ、じゃあ、ボルクさん、近場の町まで送ってあげてよ。ついでに俺も、町に行きたいから、送って頂戴」


「ええと、わかりました」


ボルク氏は快諾し、俺達は町まで送って貰える事になった。


馬車はがたがたと振動しながら、街道を進む。


「ええと、名前を聞かせてよ。俺は龍一。君は?」


街道を進むさなか、エルフ人間にコミニュケーションを取ってみた。


「・・・サリスです・・・」


「そっか、サリスちゃん、町までの中よろしくね」


「はい、よろしく・・・」


サリスちゃんは、おどおどと俺に答える。


「何で、こんな危険な街道をいたの?危ないよ?」


俺は、そう聞いてみた。


「えっと・・・その・・・村から、逃げて来たんです・・・。」


「村から・・・?」


「はい・・・エルフの村から・・・私、ハーフなので・・・あまり村の人に良い思いをされてないんです・・・だから・・・」


ガタガタ震えて、サリスちゃんは言った。


なろう世界でありがちな、迫害された民って奴か・・・。小説で読んでると、はいはい、そんな設定ねと読み飛ばしていたものだけど、実際、こんなあどけない若い娘が迫害されてたと考えると、なんだかげんなりしてしまうなあ。


「そうなんだ・・・。頑張ったな、サリスちゃん」


俺がそう励ましてやると


「え・・・えっと・・・はいっ!」


ぱあっと顔を明るくして、俺を見るサリスちゃん・・・。もしかして、これ、なろう小説でありがちな、チョロい女って奴なのか?


頭をぽんぽん撫でてみると


「ふええぇ」


と困った顔をしつつも、サリスちゃんは俺に抱きついてきた。


「ちょっt?サリスちゃん・・・?」


「・・・怖かったよう・・・ううっ・・・ううううっ」


胸の中でボロボロ泣かれてしまった。


「・・・うるせぇなあ。泣くならよそで泣けよ」


同乗している野盗に文句を言われたので


「何か文句あるの?」


と睨みつけてやると


「いいえ、滅相もございません」


と野盗は、すぐすごとちじんでしまった。





「ほらっ、到着しましたよ。カンリアの町だ」


数時間馬車に揺られて、町に到着した。


その町は、中世ヨーロッパの様な佇まいで、典型的ナーロッパの町だった。


「じゃあ、俺たちはこれで・・・」


俺とサリスちゃんを下したボルク氏の馬車は、また街道へと消えていった。


「さて・・・これからどうするか・・・?」


俺はぽつりとつぶやく


「あの・・・リューイチさん・・・」


とサリスちゃんが俺に話しかける。


「ああ、サリスちゃん、町に着いたから、ここで別れようか。今度は、人攫いに捕まっちゃダメだぞ?」


俺が、そう、頭をぽんぽん撫でながら言うと


「ふぇえ・・・あの・・・その・・・私もしばらく行く当てが無いので・・・」


サリスちゃんはもじもじ言った。


「行く当てが無いので・・・?」


俺は途切れた会話の先を聞いてみる。


「あの・・・しばらく、一緒に行動させて下さい・・・」


サリスちゃんは、そう、俺にお願いした。


それは、なろう小説的に、自然な展開だった。


都合良く、美女、あるいは美少女に惚れられて、行動を同行する様になる展開は自然なことなのだ。


俺は、サリスちゃんを見る。


胸は無いものの、小柄で、顔も美人で、金髪のショートヘアーがチャーミングだ。風呂にしばらく入れてないのか、若干臭いけど、かかりそそる少女だった。


これが、頭悪い、エロ系のなろう小説だったら、この体をしっぽり楽しむ事ができる。


「いいよ、サリスちゃん、俺も突然放浪している身なんだ。助け合おう」


俺は、サリスちゃんを握手して、言う。


「はい!、有難うございます!!」


俺の言葉にサリスちゃんは、嬉しそうに微笑んだ。


突然、異世界に転生?した俺、都合よく、こんな可愛い娘とお近づきになれてしまった。


こんな事許されて良いのか?


頬をひっぱる。


痛い。


痛いが目の前のサリスちゃんは現実だ。


「・・・?何してるんですか?リューイチさん?」


サリスちゃんは突然の俺の奇行に困惑していた。

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