3.俺は途方に暮れながら、この広い草原をとぼとぼ歩いていた。

すると、途中で、平な土の整備された道が見えた。


そして、その道をとぼとぼ歩く、すると、遠くにかっぽかっぽと何か、固い物が道をはじく様な音が聞こえた。


その音の方向を見ると、それは・・・馬車。そう、馬車。ドラクエとかで見た、あの場所が約百メートル先にあった。


俺はなんだか感動してしまった。馬車なんて、初めて見たからだ。結構でかいもんなんだなとしみじみ感じた。まあ馬車があって当たり前なんだ。ここは、異世界なんだから。


数分待ってると、その馬車は俺の前に来た。


馬車でけぇ、馬でけぇと、観察してると、馬を乗ってる人間が俺に語り掛ける。


「やぁ、お兄さん、変わった服を着てるねぇ、一人旅かい?」


馬に乗ってる中年の男は、俺にフレンドリーに語り掛ける。


「ああ、そうなんですよ。ここは空気が綺麗で良いですね」


俺はにこやかに返事した。当然、旅なんてしてる訳ないんだが、嘘も方便である。


「そうかい、そうかい。一人旅かい。・・・所でお兄さん、ここら辺は、野盗

が出没して、一人じゃ危険なんだよ・・・大丈夫かい?」


男は、心配そうに言った。


「ええ、ご心配に要らないですよ。夜盗なんて滅多に表れるものではありませんし」


そうなのか、ここは危ない所なのか。・・・まあ大丈夫だろう。あんなデカイ熊を指先一つでダウンさせたのだ。何も心配いらない。


そして、この世界がなろうファンタジー異世界なら、そろそろ、ヒロインが出てくるはずなのだ。なろう小説はテンポが大事なのだから。


そう思っていると、ぞろぞろ複数の男が降りてきて、俺を取り囲む。


「・・・な、何?」


俺は男達に聞いてみる。


「ははは、お兄さん、鈍感とか言われない?俺達が野盗なんだよ」


「な、なんだってー!」


俺は、そう言って驚いてみせた。


「野盗とか言われても、俺、金とか持ってないんですけど。ホームレスなんで・・・」


俺の言葉に野盗は、困惑した顔をした。


「ほ・・・ホームレス・・・?何だ?それは・・・。まあ、別にそれは良いんだけど。別に、金とか要らないよ。お兄さん、良い体してるから、奴隷として売り飛ばしても良いお金になりそうだし・・・」


「・・・え・・・?人さらいって奴ですか?」


俺が聞いてみると、野盗はうんうんと頷き


「そうだよ、馬車の中に居るお嬢ちゃんみたいに、お兄さんを捕まえるよ」


そう、野盗は、馬車の中を指さした。


馬車の中には、金髪の少女が縄で縛られ、猿轡をされて、こちらを見ている。


「やめましょうよ、人さらいなんて。良くない事ですよ?」


こんな悪人に説得する必要も無いと思うが、とりあえず、倫理観に訴えてみる。


「いやいや、こちらも、生活かかっているんで、じゃあ、今からお兄さんをぶちのめして、縛り上げるんで。抵抗したら、痛い目を合うので、抵抗しない方が良いよ?こちらも、手荒な真似は心が痛むので」


そう言って、男達はじわじわ俺に近づいて来た。


「ステータスオープン!!」


俺は虚空に向かって叫んでみた。


すると、男達の頭上に文字が羅列される。


野盗 ボルク レベル14

野盗 トーバス レベル12

野盗 ポンドウ レベル11

野盗 ロバツ レベル13


ずらずらと、彼らのステータスが表示される。


「お兄さん、お覚悟を」


先ほどから俺に話しかけている野盗・・・ボルク氏は俺に、攻撃前の最後の言葉を放った。


「やめましょうよ、ボルクさん。あなたは俺に勝てないですよ?」


そう俺は、彼に警告した。


その言葉にボルク氏は仰天する。


「な・・・なんで俺の名前をしっているんだ!お前、どういうスキルを持っているんだ!!」


スキル・・・異世界によくある、アレの事だろう。


「痛い目に合わない内に帰った方が良いですよ。平和的に行きましょうよ」


俺は、彼が間違いを犯さないように説得する。


「ぐうううううっ!いや、どうせ、名前を知れるだけのしょうもないスキルに決まってる!!野郎ども!やっちまえ!!」


そう言って、こん棒を振りかざして野盗たちは襲い掛かってきた。


俺は野盗たちが持っているこん棒を、身構えもせず、体で受け止める。


「なにぃ!!」


自分達の渾身の一撃を、何とも感じてない俺に対して、野盗はびっくりしている。


「ほい!ほい!ほい!ほい!」


俺はボルク氏を残して、一人ずつ、デコピンをする。


「うおっ!」「おほっ!」「おんっ!」「ピギャー!」


男達はそれぞれ悲鳴を上げながら、気絶してしまった。いかん、やりすぎたか・・・?


男達のステータスは「HP」項目はわずかに数字が残っており、ステータス異常に「きぜつ」と表示されていた。


どうやら、殺しては無かったらしい。良かった、流石に、人を殺す覚悟は、まだついてない。


「ボルクさん、あなたも、デコピンされたい?」


俺は指をピシピシ鳴らしていると、ボルク氏は「ひぃいい」と悲鳴を上げた。


「降参する?」


と俺が聞くと


「はい、降参します」


とボルク氏は降参の意を表したのだった。

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