第31話 聖都に到着したけど、聖女の水着ポスターって何ですか?

【RankLive配信画面】


視聴者:600人/コメント欄:神聖王国ルーメンテリア

[カメラ:ドローン/常時配信ON]


 保安局のゴーレム車両が丘を越えた瞬間、白い街並みが視界いっぱいに広がった。

 丸いドーム屋根と鐘楼が並び、光の粒が風に漂っている。

 神聖王国ルーメンテリア──エルデナ地方のハーバル村から東へ三日。

 小さいけれど、宗教的にはかなり格があるらしい。


(……バチカンみたいなとこだな)

(白い石畳、聖歌、旗、どこ見ても神って感じ)

(でも、思ったより静かだ。

 もっと観光地っぽく人でごった返してるかと思ったのに)


【コメント】

「やっと着いたか!」

「光の国きたーーー」

「背景まぶしすぎて凡神が白飛びしてる」

「草の村から光の都へ」


(白飛び?)

(……まじだ、なんか歌舞伎役者みたいになってる)


 門の前には、巡礼者と行商人が入り混じっていた。

 魔導札を手に入場祈祷を受ける人、記念写真を撮る旅人。

 その中で、地味な旅装束の俺だけが浮いている気がした。


 衛兵にRankLive端末を見せると、軽く敬礼される。

「配信者ユウマ=タナカ殿ですね。聖都観光、ようこそ」


(観光じゃないけどな……)


 魔導端末(ドローン)が自動でカメラ角度を調整し、街の全景を映し出した。

 白い石畳。光の反射。香の煙。

 静けさと、どこか息の詰まるような整然さ。


【コメント】

「BGMがないのが逆に神々しい」

「凡神、聖域入り」

「ルーメンテリアの空気うまいって聞く」


「聖女に会いに行くのは夜なので、まずはギルドで転入登録します」


 配信端末に向かって軽く手を振る。

 視聴者に状況を説明するのも、もうすっかり習慣になっていた。


【コメント】

「今日も安定の凡神ナレーション」

「段取り完璧すぎて草」

「説明助かる」


 旅先のギルドでは、冒険者も住所みたいな扱いで活動拠点を登録する。

 中央通りを抜けた先、白い建物に「冒険者ギルド・ルーメンテリア支部」と刻まれていた。


 中に入ると、まず視界に飛び込んできたのは──

 書類の山でも、職員でもなく、


 ギルド受付全面をジャックした、聖女ルミナスの巨大ポスター。


 しかも、複数。


 「微笑みの祝福Ver.」

 「祈りの夕暮れVer.」

 そして──


 「限定・水辺の祝祭Ver.(※ほぼ水着)」


(……ちょっと待て。

 聖女って、もっとこう……神々しい存在じゃなかった?)


 ポスターの端には小さく

 《祝祭衣装:特定条件でドロップ》

 と書いてあった。


(ドロップ!?

 聖女の水着ポスターって、そんな扱いでいいのか?

 てか、これ公式なんだよな……?)


 よく見ると、ギルド職員用らしき棚にも

 「ルミナス卓上カレンダー(全24種)」が雑に積まれている。


(……この街のギルド、推し活で運営されてない?)

(……安全祈願の横に推しポスター大量貼りってどうなんだ)

(神の加護というより、ファンの圧なんだけど)


 カウンターの向こうには、髭の濃い修道僧がいた。

 司祭服の袖をまくり、手際よく羽ペンを動かしている。


(受付がおっさんなんだ?)

(いや、ここでは普通なのか??)


 顔に刻まれた傷跡。

 袖口からのぞく前腕は、鍛えられた筋肉でごつい。

 その仕草に無駄がない。祈りながら書類をさばく姿が妙に堂に入っていた。


「転入登録だな。……ユウマ=タナカ殿、で合っているか?」

「はい。RankLive登録者です」


「ふむ、配信者か。昔は私も少し冒険をしていてな。

 この街は静かだが、裏ではいろいろある。気をつけろ」


 コメント欄がわっと盛り上がる。


【コメント】

「ポスターすごいね?」

「修道僧なのに腕がゴリラ」

「元パラディンっぽいw」

「絶対サイドクエ発生するNPC」

「凡神、また変なのに目つけられてるぞ」

「受付嬢じゃないんだ!ミーナちゃん安心してるはずw」

「いや、でもこのおっさん強そうで好感持てる」


「ほう……お前さん、見た目より数字あるな。

 600人同接? 中堅クラスじゃねぇか」


「いやいや、2、3回たまたまバズっただけで。俺、派手なスキルもないし、戦闘も下手だし……地味が取り柄みたいなもんです」


「地味が取り柄、か」

修道僧は顎を撫で、どこか納得したように笑った。


「この街では、派手な者ほど早く消える。……案外、お前みたいなのが長く残るのかもしれんな」


(いや、慰めの言葉にしては重いな)


【コメント】

「修道僧の説法じみてて草」

「凡神、地味がアイデンティティ」

「ミーナちゃんも『地味が特別』って言ってたよね」

「この人、たぶんあとで助けてくれるやつ」


(確かに)

(そういうキャラっぽい)


「部屋で休むか」

「はい、一番安い部屋で。その後用事が」


 俺はふと思いついて、聖女のことを聞くことにした。

「ところで……、このポスターの聖女イリス・ノアールって……どんな人なんですか?」

「え? ……あー……」


修道僧が一瞬、言葉を選ぶように眉をひそめた。

「まあ……見た目は天使、性格は台風、ってとこだな。

礼拝のあとに宣材撮るような人だ。……いや、信仰心は本物なんだがな、多分」


(やべーやつの匂いしかしない)

(なんかまた、行きたくない)


【コメント】

「礼拝のあとに宣材撮るような人で腹筋崩壊」

「凡神の地味センサーが反応してるw」

「修道僧の地元民トーンがリアルすぎる」


***


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