第25話 またトドメ前に乱入か──同じ手が二度通じると思うなよ!?

【RankLive配信画面】

観覧者:6,002人/コメント:狂乱の洞窟・第8層(最下層)

[カメラ:ドローン追尾/視界安定モード]


 霧を抜けた瞬間、空気が変わった。

 洞窟の奥、巨大な玉座のような岩に黒い影が腰を下ろしている。

 その姿を見た瞬間、背筋が凍った。


「……ラスボス、狂獣堕王ゼル=バロス


 バージルの声が低く響く。

 瘴気が渦を巻き、岩壁が呼吸しているみたいだった。

 やがて、玉座のような岩の上で――その王がゆっくりと立ち上がる。

 黒い鎧の隙間から、灼けたような魔力の光が漏れ出した。


 頭部には王冠のように歪んだ角。

 その瞳孔は、人のものとも獣のものともつかない金色に光っていた。


 ゼル=バロスが息を吸い込む。

 次の瞬間、洞窟じゅうの岩が共鳴して鳴った。


 ゴォォォォ……ン……


 低音が胸骨の裏側を殴りつけ、視界が一瞬白む。


【コメント】

「ついに来たあああああ!!」

「凡神、ラスボス前線突入」

「視聴者数6,000人超え!」


 背後で、リナが魔導端末を操作している。

 彼女の眉がわずかに動いた。


「……ユウマ。エグゼの配信もここを捉えてるわ」


「どこに?」


「すぐ近く。洞窟の外縁。あなたが戦うのを待ってる。

 トドメの瞬間を狙って乱入する気ね」


 喉が熱くなった。

「……きたねえ」


 バージルが短く息を吐いた。

「気にするな。派手に暴れる奴ほど、最後に隙を見せる」


 そう言って、剣を抜いた。

 その銀の刃が霧の光を弾き返す。


「ユウマ、感情鎮静を十回重ねろ」


「……え? 十回も?」


「やれ。ゼル=バロスは狂乱の王。感情を鎮められるほど動きが鈍る」


「……了解」


 俺は深く息を吸い、足元に意識を集中させた。


【サブスキル発動:感情鎮静 ×1】


 青い魔方陣が淡く浮かび、光の輪が地面を滑る。

 空気が静まり、霧が凪ぐ。

 その中心で、巨体の瞳がわずかに細くなった。


(……効いてる)


 もう一度。

 そしてまた一度。


【感情鎮静 ×3】

【感情鎮静 ×6】


 光輪が重なるたび、世界の色が一段ずつ落ちていく。

 赤、橙、黄……やがて音まで静かになった。


 ゼル=バロスの動きが、まるで映像のスロー再生みたいに鈍った。


【コメント】

「静かすぎて怖い」

「でも凡神、地味に強ぇ」

「これ、マジで削りきれるのか?」


 剣を構え、また踏み込む。

 刃が鱗の隙間を掠め、火花と瘴気が散った。

 ゼル=バロスの巨腕が叩きつけられるたび、地面が揺れる。


(動きは鈍ってる。感情鎮静、効いてる……!)


 回避、斬撃、退避。

 小さな傷を重ねながら、じわじわとHPを削る。

 派手さはない。けど確実に勝ちが見えてきていた。


【コメント】

「凡神、これガチで勝つぞ」

「地味だけど職人技すぎる」

「アンチ息してないw」


(よし、このまま……あと少し)


 息を吸い、最後の一撃に力を込めた――


 その時、遠くで機械音がした。

 ドローンの羽音。


 その瞬間、上空の霧が閃光に裂けた。


【RankLive対戦モード 起動】

【対戦相手:煽神エグゼ】


「Yo、凡神。待ってたぜ」


 紫の光が降り注ぐ。

 十のドローンが、洞窟をまるでステージのように照らし出した。

 その中央に立つエグゼが、口の端を吊り上げる。


「へぇ……保護者付きでラスボス挑戦か?

 おままごとかよ、凡神」


 笑いながら、カメラにウィンクを飛ばす。

 光の加減すら計算した完璧な煽り。


【コメント】

「煽神きたあああああ!!」

「凡神ラスボス中に乱入とかwww」

「保護者呼ばわり草」

「地味 vs ド派手の構図w」


(……こいつ、本気で視聴率のためにやってる)

(戦いを、遊びにしてる)


 拳を握った。けど、声には出さない。

 ここで感情を乱したら、相手の思うつぼだ。


(落ち着け……俺は平凡スキル使いだ。冷静でいろ)


 そのとき、紫の炎が足元を走った。

 空気が震え、魔方陣の光が一瞬、逆流する。


「……なに!?」


 息を飲んだ瞬間、世界が、歪んだ。


***


カクヨムコン11に参加しています。

読者選考では、皆さまからいただく「★」が大きな力になりますので、応援いただければうれしいです!


転生したら【平凡】スキルで、女神に雑に送り出されたけど、気づいたら異世界トレンド2位になりました(本作)

https://kakuyomu.jp/works/822139838989360870


戦略屋は口だけだと言われたので、ファーム最強だった俺が異世界で魔王軍を再建してやんよ(新作もぜひ!)

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その分、ひとつでも心に残る物語を紡げるよう、最後まで全力で書きます。

どうぞよろしくお願いいたします。

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