死術師アルメ☆リア
イズラ
[第1話]死術師と霊術師
Episode 1-1
平日なら、身支度と朝食を終えたら学校に向かう。
授業が終わればさっさと家に帰る。
そして、帰れば居間で”有意義な時間”を過ごす。有意義過ぎてあくびが出る時間だ。
夕飯を食い、風呂に入り、午後九時半に就寝する。
──至って、健全な学生である。
まぁ、イレギュラー二点を除けばの話なんだけど……。
一、俺は、肉体に「別の意識」を飼っている。そいつの名前は後から言う。
二、俺は「死術師」である。化け物退治のスペシャリストだ。
これは、そんな俺の「転校」と「出会い」から始まった、愉快かつ邪悪な世界の話。
……どうして、こんなにも後悔することになったのだろう。
*
出会いは、死束アルメが扉を開けて、教室に入った瞬間だった。
なぜか、彼女と最初に目が合った。四十人もいるクラスメイトの内の、たった一人。
前から二番目、窓側からも二番目の席。
髪型は、さらさらの黒髪をポニーテールに結び、赤色の綺麗なゴムで止めたもの。
引き締まった二重。通った鼻筋。
少し上がった口角が、彼女の”期待”を伺わせていた。
「……世田谷から来ました。死束アルメです。よろしく」
決して情緒的ではないが、はきはきと喋っている。顔もそこそこ整っており、散らばってそうでまとめっている髪型も、よく似合っていた。
そして、ホームルーム後の休み時間。
「よろしく!」
目が合った瞬間、二人同時にそう笑いかけていた。
「……え?」
「……ハ?」
呆然と見つめ合う二人。──死束アルメと、一人の女子。
「……あー、私、
「あー、おう」
初対面特有の気まずさよりも、さらに気まずい。
周囲の視線も徐々に集まり始めた。
「……あー、死束って、結構、珍しい苗字だよね」
「そ、そうだな。そーゆう家系でさぁ」
すると、スミカは「待ってました」と言わんばかりに一歩、彼に踏み込んだ。
「……あー知ってる! 死束家って、有名な死術師の家系だよね~!」
すると、それを聞いていた周囲が、ざわめきを走らせる。
「え、なに、死術師って”あの”……?」
「マジか……」
「”死束”って、なんかかっけぇもんな……」
男子を中心に、すでに一目置かれ始めるアルメ。当人はかなり焦って、スミカに詰め寄っていた。
「な、ん、で、そ、れ、を、い、う、ん、だ、よ!!!」
「えぇ!? いや、知ってたからつい言っちゃって……」
アルメは明らかに敵意の目を向けており、スミカはおどおどとしている。早くも人間関係に亀裂が入りかける中、アルメがフッと息を吐く。
「……それじゃ、意趣返しといこうか」
「……え?」
「霊堂寺スミカ。お前の家、霊堂寺家は、霊術師の名門だろ!」
次の瞬間、教室が、しんと静まり返った。
かと思えば、直後、驚愕の悲鳴が上がるのだった。
「え!? スミカ、霊術師だったん!?」
「ヤババ! ちょっとかっこいい!」
「ライセンス見してよー!」
女子を中心に、とんでもない賞賛を浴びるスミカ。
もう本当に、驚きと感動が渦まく教室。
「……ずいぶんと盛り上がったな?」
アルメはニヤリと笑い、顔を赤らめているスミカを見下ろした。
スミカは「……あんた、まじ?」と掠れた声を吐いた後、「……バカ!!! めっちゃ恥ずかしいじゃん!!!」とアルメに怒りをぶつける。
「へっへへーんだァ!」
それでも、アルメは一切悪びれない。
スミカ、彼を見上げながら睨む。すると、アルメも見下しながら目を細めた。
「お前が先だろ……」
「……あー、もういい!!!」
スミカは彼に背を向けると、さっさと教科書を持って教室を出た。
「……バカバカバカ」
──最悪で、最高の出会いだった。
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