お茶に奇譚
櫻庭ぬる
金木犀
数日前に通ったときには、それはただ色の濃い緑の葉っぱの一群であった。
だが今は、小さく鮮やかなオレンジの花がいくつもの塊を作っている。
夏のような鮮明な色をしているが、咲くのは秋の始まり。街の至る所で群れを作っているのが見受けられる。
小さな小さなオレンジの帽子を被った小人が、そこかしこの葉っぱに座って、くすくす笑っているような、そんな錯覚を覚える。
いや。
錯覚ではなく、それはやがてはっきりとした声となった。
――綺麗だねぇ
――綺麗だよ
――嬉しいねぇ
――嬉しいよ
そんなことを、言っている。
それからまた3日ほど経った。
彼らは既に、みな一様に地に落ちてしまっていた。
春の桜より短く咲き誇り、散る様もほとんど見せぬ。潔い去り方をする。
小人のくせに、粋な有り様だ。
人の通りの邪魔にならぬようにと気を使っているかのように、道の脇に固まって、風に吹かれていくのをくすくす笑いながら待っているようであった。
――楽しいねぇ
――楽しいよ
――また来るね
――また来るよ
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