2 実行は十日後
ミライは後ずさった。
「ふ、不審者っ……!」
助けを呼ぶために駆け出そうとしたが、その男の一言に、思わず立ち止まった。
「君は重大な秘密を抱えていて、アカシックレコードでそれを調べられなくする方法を探している。そうだね?」
「な、なんでそれを?」
「ある情報筋から得たんだ。驚かせてしまってすまない」
「……そうです。私はどうしても知られたくない秘密がある。だから何だって言うんですか? そんなことを知ってるのは余計に怪しすぎる。通報しますよ」
通報、という一言に男は慌てた。
「や、やめてくれ。大事になってしまう。そう言えば、名乗っていなかったね」
そう言って男はサングラスとマスクを取った。そして、そこに現れた顔を見てミライは驚愕した。その顔を幾度もテレビで見たことがあったからである。
「か、
「サインはまた今度書くよ」
「いや頼んでないですけど……。それにしても、今をときめく大人気俳優がなんでここに?」
加古川は、姿勢を正してミライに言った。
「実は、僕も絶対に知られたくない秘密があってね。レコードによってそれがバレるのを防ぎたいんだ。しかし一人では不安だ、ということで協力者を探していた。そんな時にある情報筋から君のことを知り、ここまで会いにきたという訳なんだ」
ミライはそれを聞き、警戒を解いた。
「なるほど。じゃあ私たちの利害は一致してるんですね。でも私、役に立てるかな……。秘密を隠す方法がなんにも浮かばないんです。加古川さんは、何か良い策ありますか?」
「ああ、一つあるよ。これは確かな情報なんだが、レコードで『○○ 非公開』と検索すれば、それについての情報を非公開に設定できる方法が出てくるんだ。
他の抽選に当たった人の一回分の検索を利用してそれを実行すれば、怪しまれることなくその秘密を隠蔽できるというわけさ」
「ええ、アカシックレコードってそんなことまで調べられるんですか?」
驚くミライに、加古川は頷く。
「ああ、なにしろレコードには全てが記録されているからね。
現に、レコードで『アカシックレコード』というワードを含めて検索しても一切の情報が出てこないらしい。これは、レコードの製造者がレコード自体の情報の流出を防ぐためにこの非公開の方法を使ったため、ということらしいんだ」
なるほど。その方法を使えば、在本君にバレずに自然に隠蔽できる。
ミライは手を差し出した。
「分かりました、手を組みましょう。是非よろしくお願いします」
加古川もそれに応じ、手を差し出す。
「どうぞよろしく。チーム名は……、そうだな。アカシックレコード隠蔽工作班、なんてのはどうかな」
「いやそれは何でもいいんですけど……」
二人は握手を交わし、同盟を結んだ。
「実行は十日後のゴールデンウィーク最終日。その日に、ある場所に当選者が集まり、第二回アカシックレコード検索大会が行われる。そこで僕らは秘密の隠蔽をするんだ。これからよろしくね」
二人が胸中の思いを燃え上がらせながら握手をしている背後で、その一部始終を見ていた人影があった。
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