旧校舎の声 ー過去編:封じられた放課後ー

@yuzumalu

第一章 最後の掃除当番

旧校舎が取り壊される直前の春。

まだ夕方の光が残る廊下で、

ひとりの男子生徒がモップを動かしていた。

名前は佐原悠真(さはら ゆうま)。

成績は普通。性格も地味。

誰にも嫌われず、でも特別好かれてもいない。

どこにでもいるような生徒だった。

けれど、彼は知っていた。

この旧校舎で、“誰か”がまだいることを。

それは数日前。

掃除の最中に、黒板の文字が勝手に消えた。

消し跡のあとに、ひとことだけ浮かび上がった。

「きこえる?」

その瞬間から、悠真の放課後は静かに変わり始めた。

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