第5話 旧Y市事業所地下

中へ入ると涼しく鉄の匂いが充満していた。


「うわー鉄くさーい」

「切削加工や鋳造を主にしていた工場らしいからな、鉄の匂いが残るんだろうな」

「詳しいわね」

「ホームページに載ってた、さぁまず何を調べるかだ」

「何がなんだかわからないし端から順に探しましょ」

「そうだな」


中は広くいろんな機械がある、旋盤やフライス、トーチなど本当に鉄を加工していたと思われる機械がぞろぞろと並んでいる。


「これなにこれなに!」

「あーこれは鉄を、、、、」

「あれもこれも!」

 

桃奈は遊園地に来たかのようにはしゃいでいる、無視して先に進むか、、


一人で辺りを散策していると責任者室と書かれている部屋を見つけた

ドアノブをひねると鍵は閉まっておらず錆びた鉄ががボロボロと音を立てながら落ちていく、中は意外にも綺麗でホコリっぽいだけであった。


中には制御盤や通信機器などどれも古いがこれまた様々な機会が置いてある。


「んーこれと行って気になるものはないな、引き出しの中でも調べるか」


引き出しを開けていくと写真が数枚と鍵が出てきた

鍵には札がついていたが中の紙が抜けていてどこの鍵かはわからない

写真を見ると工場が動いていた時の写真だろう

今は開かない搬入口が大きく開いている写真だ

煙突や重機が映っている写真もあり当時の情景が浮かび上がる

写真についたホコリを指で取ると19◯◯年 旧Y市事業所と書かれていた。


「旧?ここの他にあるってことか?」

そう呟く


写真を見ていると桃奈が部屋に入ってきた


「こんなところにいたんだ、そうそう見て欲しいものがあって」

「あぁわかった行くよ」


俺は鍵と写真の束をカバンに入れ部屋を出た




「これなんだけど、なんか変じゃない?」


モモナが指を指したのは壁だった、だがそこだけ色というか素材?が違う


「んーと言われれば変かもしれないな、、、ん?」

よく見てみるとその素材の周りが溶接でしっかりと固められている

溶接部分は生きているが何かを塞いでいる部分の鉄板はサビが進行していた

ハンマーか何かで殴れば壊せそうだ


「壊せそうかもな、なにか硬い物で叩こう」

「さっき壁を壊したハンマーとか」

「そうだそれを持ってきてここを壊そう」


ハンマーを持ってき壁を叩く、カーンカーンという音を立てハンマーで壁を壊していく、さっきのトタンとは違い硬く頑丈だ、これは少し疲れそうだ


五分ほど叩いただろう、突然ズボッという音とともにハンマーが壁へ吸い込まれる     


「開通だ」


ハンマーを抜き人が通れるように周りを叩き壊す


「やっと通れそうね」

「やっぱトタンと違って硬かったな、鉄で指とか切るなよ破傷風になるから」


気をつけながら中に入りスマホのライトを照らす

あたりを照らすと階段がみえた、どうやら階段は下につながっているみたいだ


「地下?」

「工場に地下室なんかあるのか、」

「なんかちょっと怖いね」

「そうだな、なんであんな塞ぎ方をしたのかも気になる」

「もしかして地下に姉妹を隠してたとか?」

「映画じゃないんだそんな事あるわけない、、、」


姉妹が閉じ込められていた可能性はあるだが現実的じゃない、警察が3日も、捜査したんだ、警察が地下室を捜査してその後に塞いだってのが現実的だ


「確かにそうだけどなんで塞がれてたんだう」

「警察が捜査して危ないと判断して塞いだんだろう」

「そういうことね、まぁとにかく行ってみましょ」


足元を照らし奥へ進んでいく、ジャリジャリという音をたてながら階段を降りる

音の正体は切り粉か何かだろう


「汚い階段ね、泥まみれよ」

「地下は下水に近そうだしそれ汚物かもよ」

「いやっやめて、踏んじゃったじゃないの」


ざっと4階分ぐらい降りると目の前に二枚の鉄扉が現れた


「ドアよ、でもまだ綺麗、地下で風化も進んでないのね」


ガチャガチャとモモナがドアノブをひねる


「ダメだ、開かないこんなに綺麗じゃ壊せそうにもないわね」

「待って、これ使えるかも」


俺は責任者室で見つけた鍵を思い出しそれを差し回した

ガチャっという音を立てが開く


「開けるぞ」

ギシギシと音を立てながらドアが開く

その瞬間強烈な匂いが鼻を刺す


「ううぅ、おぇ何だこの匂い?鉄か?」

「おえおおぇぇぇぇぇぇえええぇぇっ」

「おい大丈夫か!?」


モモナが突然嘔吐した


「これ、、、、、血の匂いよ、、、、腐敗臭もす、、うううっぇぇえ」


血、、?急に悪寒が全身を包み込む、刺すような視線、ここはだめだ早く出ないと


「とりあえず早くここを出よう」


俺はモモナを抱え階段を登る、登っている最中も後ろから追いかけてきているような気配を感じる、階段を登りこじ開けた穴をめがけて飛び込む


「はぁはぁはぁ、大丈夫か怪我はないか!?」

「、、ないけど、気持ち悪い、、、血みたいな、、うおうぇぇ」

「喋らなくていい、一端落ち着こう」


桃奈の背中をさする

時刻は5時前、オレンジ色の夕日が屋根の隙間から差し込む


「とりあえずここから出よう」


桃奈を抱え工場を出た

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姉妹失踪事件 お麩豚 @ayiiu

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